カムカムエヴリバディが朝ドラの革命と言える訳 「100年3ヒロイン」「高速展開」という攻め方

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「革命」という大仰な言葉を使うのは、『カムカムエヴリバディ』だけでなく、今年のNHKのドラマ作品全体に、大きな地殻変動を感じたからだ。平たく言えば、今年のNHKのドラマは攻めていた。

まずは朝ドラの前作『おかえりモネ』。朝ドラ久々の「現代もの」だったが、冷静で淡々としたタッチの中に、東日本大震災ほか、現代社会のさまざまな断面を組み込んだ脚本は見事だった。

現代社会のさまざまな断面――例えば、ヒロインの百音(清原果耶)による「もし、助けてもらってばっかりだったとしても、それはそれでいいっていう世の中の方がいいんじゃないかな」というセリフは、「自助」が安易に取り沙汰される時代へのメッセージだと、私は受け取った。

朝ドラ以外では、特に「土曜ドラマ」「金曜ドラマ10」枠が野心作ぞろいで、特に『六畳間のピアノマン』『きよしこ』『今ここにある危機とぼくの好感度について』『ひきこもり先生』(以上「土曜ドラマ」)、『半径5メートル』(4~6月)、『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』(以上「金曜ドラマ10」)などの攻め攻めな作りには目を見張った。

また、新しいところでは、「PMS(月経前症候群)&生理と向き合う私たちの、『言えない言葉』と『言わない気持ち』が交差するポップ&ハートフルな“雨の日”のドラマ」(公式サイト)=『雨の日』(11月3日放送)には、腰を抜かすほど驚き、感心した。

NHKドラマの野心的なたくらみ

全体に、(民放ほどには)視聴率に縛られないことが奏功しているのだろう。今年のNHKドラマには、野心的なたくらみを強く感じた。今、NHKで最も攻めているジャンルは、報道やバラエティではなく、ドラマだ。

野心的なNHKドラマは、内容のすご味ほどには話題になっていないかもだが、それでも静かなる「無血革命」、テレビの名誉を取り戻す「名誉革命」が進行していると言っていい。

NHKドラマで進行中の「革命」を受けて、その象徴である朝ドラ『カムカムエヴリバディ』が発進した。「高速展開」「100年3ヒロイン戦略」「藤本有紀」の3本の矢を携えた「朝ドラ革命」が起きると信じる。

「革命」を推進力として、『カムカムエヴリバディ』は「ひなたの道」(On the Sunny Side of the Street)を歩いていくだろう。雨は降らないだろうか。大丈夫、前作の気象予報士・百音が、天気をずっと見ていてくれるだろうから。

スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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