無論、これは家庭用だけではなく、業務用も同様だ。東京での1人暮らしでは、自炊より外食のほうが安くなることもあった。実際に、ワンコイン以下でランチが食べられる夢のような国だったが、この先もそうとは限らない。粉や油が上がると、麺類や揚げ物などのコストが上がる。また輸入食肉価格の高騰も続いており、牛丼チェーン松屋は「牛めし」を値上げした。食品全体がじわじわ上がっているのだ。
大きな要因は、やはりコロナだ。生産地や工場での働き手不足による生産停滞、コンテナ不足による運賃の高騰、経済活動が急激に回復しつつある各国との取引価格競争など、供給が需要に追い付かないため、値段が下がる要因がない。幸い、日本は米だけは安定しているので、弁当も丼も、ごはんの量だけは増えていく……なんてこともあるかもしれない。
また、10月からは働く人の最低賃金も引き上げになった。歓迎すべきいいことではあるが、その人件費もコストに乗ってくる。人件費を削って利益を上げる――なんてやり方は、難しくなる一方だろう。
デフレの申し子・100均も絶滅の危機?
コロナ遠因のコスト高騰は、別の身近な価格にも影響を及ぼしそうだ。アジアで工場の稼働が止まる、輸送費がより上がる、さらには後でも触れるがエネルギー価格がとんでもなく上がりつつある現状では、これまで海外で安く製造してきた100円グッズ業界が苦しくなるのではと危惧している。
先の食品とは違い、「原材料費が上がったので来月から値上げします」と言えないのが、価格を固定している100均グッズだ。先日も、業界大手のキャンドゥがイオンの子会社になる道を選んだが、このままでは収益確保が厳しいという台所事情もあったのだと想像する。
過去連載でも取り上げてきたように、多くの100円ショップは、すでに300円・500円といった多価格帯戦略をとっているとはいえ、それでも主力は100円商品のはず。いつまでワンコインにこだわり続けることができるか、心配だ。
100円ショップも、牛丼チェーンも、いわばデフレの申し子だ。しかし、“安さ至上主義のビジネス”は、そろそろ金属疲労を起こしているのではないか。
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