「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある

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ただし、日本の木は、もう成長し切った壮年の木が多い。森林面積がすでに相当多い日本でこれ以上森林自体を増やすことは難しいため、いったん木を切って、若木を植えて再度成長させることが必要だ。これで国内の森林の吸収力を最大限発揮できれば、全炭素排出量の20%分程度に相当する可能性がある。

木を切るなら、その木を使う需要が必要になる。もちろん、切った木を野原に積んでおく手もあるが、コストを賄うビジネスが回っていないとサステナブルにならない。そこで注目されるのが木造ビルだ。

建築着工統計によると、いわゆる戸建て住宅はすでにほとんどが木造だが、4階建て以上の建築物は逆に多くが鉄・コンクリートである。高層になると強度の問題があるが、10階建て未満の中層なら、住宅にせよ非住宅にせよ建築基準を満たせる技術が確立してきている。あとは耐火工法も踏まえたうえでのコストの問題をどうクリアするか。ここは民間だけでなく、政策とも連動した市場創造の工夫のしどころだ。

吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれからだが、徐々に動きも出てきた。一方で日本の関係省庁は、すでに吸収源の重要さに気づき、国内政策の準備を始めつつある。国際的枠組みとも連動させ、実績でも世界をリードしたいところだ。

カーボンニュートラルを日本にとってのチャンスに

カーボンニュートラルに向けた取り組みは、これまでに例がないほどの努力を要する。しかし、こういうときこそイノベーションのチャンス。ビジネスの世界で失速しつつあった日本企業の逆転のフィールドにできる可能性がある。

そのためにも、技術のイノベーションだけで考えるのは絶対にやめたい。ビジネスモデルを作り込み、政策が有機的に組み合わされることが必須だ。民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける。

(三宅 孝之/ドリームインキュベータ代表取締役社長COO)

地経学ブリーフィング

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『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

2023年9月18日をもって、東洋経済オンラインにおける地経学ブリーフィングの連載は終了しました。これ以降の連載につきましては、10月3日以降、地経学研究所Webサイトに掲載されますので、そちらをご参照ください。
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