日本の「経済安全保障」絶対押さえておきたい論点 国家安全保障戦略と目的は同じでも手段は異なる

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経済的な合理性とは異なる選択にならざるをえない戦略でもある(写真:tomcat/PIXTA)
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

総選挙を終えた岸田政権の目玉は、経済安全保障担当大臣を設け、当選3回の小林鷹之をそのポストに就けたことである。

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経済安全保障は、政権発足前から甘利明前幹事長が中心となって進めてきた自民党の新国際秩序創造戦略本部が2020年12月に「経済安全保障戦略策定」に向けた提言を発表し、それに基づいて2021年5月に「経済財政運営と改革の基本方針2021」に向けた提言を明らかにしている。経済安全保障を積極的に取り入れるよう働きかけていた甘利前幹事長は小選挙区での議席を失ったことで幹事長を辞任したが、それでも岸田政権の政策は、これらの提言を基礎に進められることになるだろう。

世界に先駆けて「経済安全保障」を政権の正面に据えることは多くの注目を集めることになる。この真新しい政策テーマに関して、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)としても地経学の観点から取り組まなければならないと認識し、経済安全保障戦略プロジェクトを立ち上げた。その第1回目として、ここではこの新しい政策テーマにおける論点を整理しておきたい。

「経済安全保障」は安全保障なのか

自民党の提言では、経済安全保障は「我が国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」と定義され、その手段として「戦略的自律性の確保」、すなわち日本の社会経済活動の維持に不可欠な基盤を強化し、他国に過度に依存しない状態を作ることと、「戦略的不可欠性の維持・強化・獲得」、すなわち日本の存在が国際社会にとって不可欠である分野を拡大していく、という2つの方針が示されている。

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