「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある

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だからこそ、原子力発電にも真剣に向き合う必要があるし、それでも足りないのでアンモニアや水素発電といった非化石の火力発電に注目が集まる。例えば水素発電は、LNG発電所という既存インフラが活用できる。コストの問題が難しいと言われるが、そんなことを言っている場合ではない、水素FITでも炭素税でもあらゆる政策手法を導入して水素活用を進めなければならない状況だ。

ちなみに水素発電を電力全体の10%に導入するには約600万トンの水素が必要だが、現状日本で生産される水素は99%が自家消費であり、流通する水素は1万トン程度。そのため、川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる。投資の巨大さと実現までの時間軸を考えると、そのための政策設計はこの2~3年が勝負だ。

再エネ拡大で必要となる電力インフラ側への対策

一方、再エネが5割になると何が起こるのかも考えないといけない。すでに九州では、増えすぎた太陽光による発電量を九州電力が受け切れなくなっている。太陽光や風力といった自然エネルギーは、発電できる時間帯に大きなムラがあるからだ。

現在の発電の主力を担う火力発電は、需要に応じた発電量の調節が可能である。そのため、再エネのようなボラティリティの高い電源や原子力のようなつねに同量で発電し続けるような発電側のムラを調整する役目を果たしてきた。

したがって、火力発電を減らすと、発電側で吸収できなくなる分のボラティリティが電力系統に大きな負担を強いることになる。発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。

これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている。しかしこの分野は、政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事である。

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