BTS、イカゲーム…韓国エンタメ圧倒的人気の必然 世界中で共感を集める理由はどこにあるのか

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年間数十本のテレビ番組を制作している韓国最大のスタジオドラゴン(Studio Dragon)のCEO、キム・ヨンギュ氏は「私たちは物語を語るのが好きで、そして語るべきいい物語を持っています」と語る。「しかし、われわれの国内市場はあまりにも小さく、飽和しています。私たちは世界市場を目指す必要がありました」。

昨年、貧富の差をテーマにした映画『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞を受賞してから、海外の視聴者は韓国に注目するようになった。しかし、同国では何年も前から同じようなテーマの作品は作られていた。

Netflix登場で韓国テレビ業界に変化

ソウルにある江南大学のカン・ユジョン教授は「NetflixやYouTubeなどのストリーミング・プラットフォームのおかげで、人々がより多くのエンターテインメントをオンラインで見るようになる前は、世界の人々はこれらの作品をよく知らなかっただけなのです」と述べている。

スタジオドラゴンのCEO、キム・ヨンギュ氏(写真:Chang W. Lee/The New York Times)

Netflixが登場する以前、韓国のテレビ業界は一部の国営放送局が支配していた。しかし、これらの放送局は、ストリーミング・プラットフォームやスタジオドラゴンのような独立系スタジオに取って代わられ、これらはクリエーターに国際市場をターゲットにするのに必要な資金と、創作表現に関する自由を提供している。

韓国の検閲官は、暴力的な内容や性的に露骨な内容を含むメディアを審査するが、Netflixの番組は、地元のテレビ局で放送されるものよりも規制は緩い。クリエーターたちは、国内の検閲制度のおかげで、より深く想像力を働かせ、一般的なものよりもはるかに魅力的なキャラクターやストーリーを作ることができた面もあると言う。

シーンには感情豊かなやりとり、つまり「シンパシー」があふれていることが多い。主人公はたいてい、深く傷つき、絶望的な状況に追い込まれた普通の人々で、愛、家族、他人への思いやりといった共通の価値観にしがみついている。監督やプロデューサーは、すべての登場人物が「人間のにおいがする」よう、意図的にしているという。

韓国は、戦争、独裁、民主化、そして急速な経済成長を体験したことで、人々が何を見たいか、何を聞きたいかをクリエーターが敏感に察知するようになり、それは多くの場合、社会の変化と関係していた。国民的大ヒット作品の多くは、所得格差やそれが生んだ絶望、階級間の対立など、庶民の心を揺さぶる問題を題材にしている。

『イカゲーム』のファン・ドンヒョク監督は、2011年に聴覚障害者学校で実際に起きた性的虐待事件を題材にした『トガニ 幼き瞳の告発』で注目を集めた。この映画が世間の、事件に対する怒りを呼び起こしたことで、政府は障害者学校から性的虐待の記録を持つ教師を探し出すことになった。

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