TBS「日本沈没」がどうにも気になって仕方ない訳 SF+人間ドラマに感じる「半沢直樹」と同じ雰囲気

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天海は言う。

「過去にも初動の遅れで危機を大きくした例を皆さん見てきているはずです」。視聴者の既視感をくすぐるセリフ。今、ドラマで語られている焦り、いら立ちや不安はわれわれの感じていることそのものだ。「地球温暖化」「地震」「経済」……私たちが日頃よく見聞きする問題に登場人物たちは右往左往している。

そんな彼らに対して天海は「俺たちには国民を守る責任がある」と力強く断言する。官僚ではあるが庶民寄りの視点をもった天海は、日本の危機に際して、人命よりも経済優先、かつ、総理と副総理の権力争いや世良の己のポジションを守りたいがためだけの振る舞いを冷静にジャッジしていく。

これまで変わり者として軽視されていた田所の研究が価値あるものに見えてくるにつれて、仲間と思っていた常盤とは意見がすれ違っていく。真実を公表したいとジャーナリズム魂に燃える週刊誌記者の椎名(杏)と手を結び、天海と椎名ふたりは裏の裏をかいくぐって新聞に関東沈没説を掲載することに成功する。ここも気持ちいい流れだった。あとは常盤が副総理派につくのか動向が気になる。

ファミリーでも見られるような間口の広さ

「日曜劇場」には日曜の夜、ファミリーでも見られるような間口の広さが大事なのである。金融の世界のリアリティーを土台にして、人間の出世欲のぶつかりあいを赤裸々に描いた『半沢直樹』はその一方で、主人公を支える妻の内助の功なども手厚く描いていた。令和の『日本沈没』もまた天海の離婚間近の妻と娘への捨てきれない愛情を手厚く描いている。

第4話以降、災害シミュレーションを緻密に描いていくのかもしれないし、ものすごい映像が見られるかもしれないし、『シン・ゴジラ』で描かれたような目覚ましい作戦が発動するかもしれない。だが今のところは、愛、正義、努力、知恵、友情……というような人間の心の持ちようで問題に対処しうると描くことは、よくもあり悪くも“エンタメ(フィクション)”なのである。

海で亀を助ける天海や、話し方が昔話の老人みたいな田所などのどこか童話みたいな雰囲気や、なにかといえばボイスレコーダーで重要情報を盗録することが効果をもたらすことも親しみやすさ向上に寄与しているのであろう。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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