超難問「働かないオジサンのやる気を上げろ」

人事部の困惑、本音、挑戦

彼の話に耳を傾けていると、制度設計や研修の内容に、気持ちがとらわれているように感じた。「会社から社員に何かを与えて、社員はそれに応えてモチベーションを向上させる」というやり方に固執しているように思えたのである。

そこで、私が経験した話をA氏にしてみた。

「俺たちのモチベーションを上げるなんて、もう無理だ」

以前、居酒屋で40代、50代のオジサン同士5人で飲んでいたとき、「どうすれば、俺たちのモチベーションが上がるだろうか」という話題になった。そこでは、
「会社から期待されていないことは、うんざりするほど感じている」
「給料も、毎年毎年、下がっている」
「若いときとは違って、社内調整も面倒くさくて、もうやれない」
「仕事にも飽きたし、会社の中で面白いことは何もなくなった」

などの意見が相次いだ。「給料が上がると、どうだろう?」と私が水を向けると、「上がった分は遠慮なくもらうが、それでやる気が出るなんてことは絶対にない(笑)」という本音の話に終始した。

「正直な話、俺たちのモチベーションを上げるなんて、もう無理だ」というのが、各自の率直な感想だった。会社の仕事に意義を感じていないという意味では、彼らは働かないオジサンたちと言えるだろう。

そろそろお開きになろうとする直前に、その中のひとりが、「でも、1年間の休暇をもらえれば、会社に戻って頑張れるかもしれない」と語った。もちろん長期休暇の間は、無給でいい。1年後、職場に戻れるという保証さえあれば、何かに挑戦したいというのだ。

その発言をきっかけに、5人の気持ちが動き出した。

「道草休暇」はどうか

会話は盛り上がり、「育児休業、介護休業のような労働基準法に関係する休暇ではなく、理由のいらない長期休暇がいい。名称は『道草休暇』だ」ということになった。

5人の話の焦点は、長期に休めるということよりも、「大学で1年間学び直せば、自分の気持ちを切り替えることができるかもしれない」「資格などにもチャレンジができそうだ」「好きな陶芸に打ち込めば、新たな自分を発見できそうな気がする」などという期待感が大きかった。

しかも5人が5人とも、その休暇に期待するものが異なっていた。いつもより遅く家路についたオジサンたちは、1年間の休暇中に何ができるかをシミュレーションしているかのようだった。

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