その翌週の新聞で、Yahoo! Japanが勤続年数が長い社員を対象に、最長1年間 の休暇を与える制度を導入する予定だと報じられていた。休暇中は無給だが、長期旅行に充てるなど、過ごし方は自由だという。 日常とは異なる新たな刺激に触れることを通じて発想力を高めるなど、社員のその後の仕事に生かしてもらうことが目的で、「休暇の終了後に退社して、起業してもよい」(Yahoo!社長)とのことだった。居酒屋議論をわかってくれる経営者がいたのである。
社員の主体的な姿勢がポイント
中高年社員のセカンドライフのプログラムとして、多様な働き方、生き方を支援する制度を開発した、ある大手企業の人事担当者を取材したことがある。その会社では、自社での再雇用、関連会社への再就職の支援、さらには転職・独立の実現を物心両面から支援する制度など、多様な選択肢を社員に用意していた。社員にとっては至れり尽くせりの充実した内容だと思えた(もちろん、会社側には人員削減の意図もあったという)。
しかしふたを開けてみると、自ら手を挙げる社員の数は想定をかなり下回った。その人事担当者は、少し小声で、「社員がここまで会社に寄りかかっているのかと驚いた」と語ってくれた。
社員が、組織から与えられるものを待っている状態では、何も生まれない。個人にも組織にも変化は生じないのだ。しかしこの道草休暇のように、個々社員に主体的な気持ちが芽生えれば、そうとう違った景色が現出するのである。
もしA氏のところに、道草休暇の申請があったとしたら
私は、A氏に「もし、Aさんの会社で社員から道草休暇導入の申請があったとしたら、どう対応するの?」と聞いてみた。
「実際には難しいでしょう」
「なぜ?」
「前例がないですから」
「社員に対する説明はそうだとしても、本当は面倒くさいからじゃないの?」
「本音を言えばそうです。普段はとても忙しい。今までにない休暇制度を新たに設計するとなると、人事担当役員のOKをとって、役員会にも諮らないといけない」
「制度にすると、確かに難しくなるね。ではなぜYahoo!は、理由がいらない休暇制度を導入するのだろう?」
もちろん、A氏や彼が勤めている会社を非難しているわけではない。多くの会社の人事担当者の本音を書いただけのことである。人事部だって会社の一部門にすぎないのだから、自分がよいと思っても、そうそう自分たちで決めることはできないのである。
しかし、働かないオジサンの問題に本格的に対処しようとすれば、社員を一律に扱う、従来の年次一括管理ではうまくいかないのではないかと考えている。それではどうすればいいのだろうか。次回に少し踏み込んで考えてみたい。
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