30歳でひきこもり脱却の男性が抱える生きづらさ 品出し早朝バイトは「もっと早くやっておけば」

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端からみると順調に社会復帰を果たしているように見える亮介さんだが、本人は決してそうは思っていない。

失敗をして怒られたり、うまく会話ができなかったりと、自分のふがいなさに落ち込むこともしばしばだ。体力には自信があったのに、帰宅後はぐったりして何もできなくなることもある。

「毎日、自分のやるべきことをこなすだけで精いっぱい。周りから『次は正社員』といわれても、自信はないし、新しいことに挑戦したり、やりたいことを考える余裕は全くないです」(亮介さん)

一度ちゃんと検査してみれば…

亮介さんが自信を持てない大きな理由の1つは、「強迫行為」と思われる自身の行動に若いときから悩まされてきたことも大きい。強迫行為とは、無意味で不合理であると自覚しながらも、意志に反して、一定の行為を繰り返してしまうことをいう。

亮介さんの場合は、スマホのスクロールなどを延々と続けてしまうことがよくある。ひたすら歩くことがやめられなくなったり、電車で降りる駅に着いてもまた引き返してしまい、乗り続けてしまったりすることもあるという。

もう1つの悩みは、子どものころから、授業の内容が頭に入らなかったり、人から何か言われても「流れてしまって」理解できなかったりすることだ。テレビを見ていても、言葉が頭に入らないので楽しめない。

お店で品出ししているときにも、たまに客から突然話しかけられると焦ってしまう。「こういう商品が欲しい」と言われても、あまり内容を理解できないので、すぐに担当者を呼びに走る。

友達はいない。子どものころ仲良くしていた友達にも、「こんな自分と話しても楽しくないだろうと思って」連絡できずにいる。

思い切って心療内科を受診してみたこともある。医師に、「一度ちゃんと検査をしてみては」と勧められたが断った。もし「発達障害」などが検査によって明らかになれば、障害者枠での就職の可能性や公的な支援があることもわかっているが、自分がその事実と向き合うことができるのか、よくわからない。

「今も、生きているのはつらいです」と亮介さんは言う。

実は、社会生活へ踏み出すことができても、亮介さんのように「生きづらさ」を抱えるひきこもり経験者は実は少なくない。

たとえば、今年6月に刊行された「ひきこもり白書2021」(一般社団法人ひきこもりUX会議)で紹介されている調査結果。2019年秋に実施した調査で、6歳~85歳、北海道から沖縄まで全都道府県から1,686名ものひきこもりや生きづらさを抱える人々が回答している。

「あなたは生きづらさを感じたことがありますか」という設問に対して、「過去にひきこもりだったことがあり、現在はひきこもりではない人」のうち、「現在生きづらさを感じる」と答えている人は80.7%にのぼっている。

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