名古屋「海老せんべいの坂角」が仕掛ける次の一手 「海老の殻」を再利用したカレーパンやプリン

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「実は、海老カツも10年前ほどから温めていた企画の一つでした。イベントに出店するにあたって、名古屋市内で海老カツを食べ歩いて味を研究しました。飽きるほど食べて辿り着いたのは、“海老感”でした」(伊藤さん)

海老感といえば、看板商品の「ゆかり」がまさにそれだ。「ゆかり」は、1枚のせんべいに約7尾もの海老の身だけを使用している。生地を鉄板ではさみ焼きにしてから乾燥、保管。さらに炭火に近い遠赤外線網焼き器で風味と香ばしさを引き立てている。このこだわりの製法によって凝縮された海老の味と風味が堪能できるのだ。

つなぎにはホタテを使用

海老感満点の海老カツとなると、何をどうすればよいのか皆目見当もつかない。しかも、中途半端なものを出してしまっては、坂角がこれまで築き上げた伝統を壊しかねない。メニュー開発はさぞかしプレッシャーがかかっていたことだろう。

「海老感を楽しむことができなければ、弊社が出す商品としての意味がなくなりますから、試作と試食を何度も繰り返しました。海老の身の割合を増やしていき、7割が味の黄金比であることがわかりました。残り3割はつなぎと調味料になります。通常、海老カツのつなぎは白身魚のすり身が使われますが、海老の風味がより引き立つようにホタテを使用しました」(伊藤さん)

イベントの目玉となる海老カツは完成したものの、世の中はコロナ禍の真っ只中。当初は2020年7月に開催、着席スタイルでの提供を予定していたが、2021年5月に延期され、テイクアウトが中心となった。

「BANKAKU海老カツサンド」540円。海老の味や香り、食感が堪能できるように衣を極限まで薄くしている(筆者撮影)

それだけではなく、「ゆかり」をはじめとする商品は、お土産物としての需要が大半を占める。コロナ禍で出張や旅行へ出かける人が減ると、それに比例して売り上げも激減した。このような事態に陥ったのも創業130年の歴史の中で初めてのことだった。

「イベントの開催そのものを中止するという議論もありました。でも、やはり開催しようと。イベント当日、若い女性のお客様が行列を作っているのを目の当たりにして、手応えを感じました」(伊藤さん)

イベントでは、海老カツは単品ではなく、「BANKAKU海老カツサンド」と「BANKAKU海老カツカレー」として販売された。筆者は、会場に足を運んで「BANKAKU海老カツサンド」を注文した。

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