名古屋「海老せんべいの坂角」が仕掛ける次の一手 「海老の殻」を再利用したカレーパンやプリン

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頬張ってみると、凝縮された濃厚な海老の旨みが口の中で爆発する。海老の密度の高さというか、しっかりとした存在感が伝わってくる。これはまさしく「ゆかり」で感じる海老感と同じ。こんな海老カツは食べたことがない。

もう一つ、筆者が食べたのは、「BANKAKU海老カレー」。若年層にPRするには、発想がやや安直なような気がする。しかし、海老の旨みが凝縮されたカレーであれば、ライバルとなる店や商品が少ないので、十分に勝算はある。

オマール海老でとったブイヨンとトマトがベースの「BANKAKU海老カレー」1059円。具材には海老も入る(筆者撮影)

「味のベースとなるのは、オマール海老でとったブイヨンとトマトです。カレーのスパイスが強すぎると海老の風味を消してしまうので、味のバランスを整えるのが大変でしたが、年齢や性別を問わず、どなたでも食べやすいようにまろやかな味と口当たりに仕上げました」(伊藤さん)

ルーをご飯にかけて食べてみると、海老の味と香り、トマトの甘みが口いっぱいに広がって、後からじんわりと辛さがくる。とはいえ、辛さはそんなにも強くはない。だからこそ、海老の風味を引き立てるのだろう。

海老感の強いこの味は、ご飯のみならずパンにも合うと思ったら、やはり用意されていた。「BANKAKU海老カレーパン」(378円)がそれだ。「ゆかり」に使用する海老の殻を乾燥させて作った海老粉を生地に練り込んでいる。

海老せんべいの坂角から「海老の坂角」へ

「実は、海老せんべいを製造する工程で出る殻の再利用も長年のテーマでした。『BANKAKU海老カレーパン』の他に、海老の殻を配合した飼料で育てられた鶏の卵を使った『BANKAKU〈坂角たまご〉のプリン』も開発しました。手作りのため、1日200個が限界でしたが、午前中には売り切れてしまうほど人気でした」(伊藤さん)

「BANKAKU KITCHEN」は、5月13日から30日まで計18日間にわたって開催され、延べ約4000名が来場した。訪れた客によるSNSの投稿も多く、味の感想とともに「東京でも開催してほしい」、「お店を作ってください」という要望も数多く寄せられた。

濃厚なコクが楽しめる「BANKAKU〈坂角たまご〉のプリン」411円(写真:坂角総本舖)

「今回は期間限定のイベントでしたが、常設店舗のオープンをめざして準備をすすめています。BANKAKU KITCHENを坂角総本舖の別ブランドとして育て、海老せんべいの坂角から海老の坂角へと認知してもらえるように頑張ります」(伊藤さん)

現在、BANKAKU KITCHENブランドでの商品開発も進んでおり、来年には新たな商品が生まれるという。海老だけに脱皮した坂角をこれからも注目していきたい。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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