イギリス「まさかの感染再拡大」が意味すること またしても医療逼迫の予兆で直面する「試練」
イギリスは過去4カ月にわたって壮大な疫学実験を続けてきた。1日当たりの新規感染が高いレベルにあるにもかかわらず、新型コロナ関連の規制を事実上すべて解除。政府は、急速に進んだワクチン接種のおかげで感染が重症化につながりにくくなったとして、このアプローチを正当化していた。
ところが、感染者数、入院者数、死者数のすべてがここに来てまたしても増加。ワクチンの効果も時間の経過とともに薄れ始め、問題の冬が近づく中、コロナとの共存を目指すというイギリスの戦略はかつてない試練にさらされるようになっている。
入院者数も、死者数も大幅に増加
1日当たりの新規感染者数は10月21日に5万人を突破。前週から18%増え、7月以来で初めて5万人の心理的危機レベルを上回った。入院者数も前週から15.4%増の959人となり、死者数は115人と11%近く増えた。
「すべてが同時に襲いかかってきている」と、新型コロナ感染症の症状に関する大規模調査を率いているキングス・カレッジ・ロンドンのティム・スペクター教授(遺伝疫学)は語る。「私の見るところ、誰にも先が読めない状況になっている」。
イギリスでは最悪期は脱したと信じられていたが、そうした見方は感染の急激なリバウンドであっけなく揺らいだ。驚くほどスムーズにワクチン接種を進め、コロナとの共存に成功したかに見えたのもつかの間、イギリスは衰えを知らないウイルスの再拡大に戸惑い、身動きがとれない状態に追いやられている。
感染者のうち入院にまで発展する割合は2%と、現時点では前回の波のピークだった1月の9%を大幅に下回っている。ただ、イギリスの国民医療制度(NHS)の負荷はすでに高まり始めており、病院は冬にかけて深刻なインフルエンザの流行とコロナのダブルパンチに見舞われるのではないかと身構えている。