イギリス「まさかの感染再拡大」が意味すること またしても医療逼迫の予兆で直面する「試練」

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さらに、スペクター教授が率いる新型コロナ研究によると、ワクチン接種済みの人が感染する割合が上がってきていることを示す証拠もある。学校に通う児童の感染が多かった数週間前とは状況が変化してきているということだ。生徒の多くがワクチン未接種の状態にある中、政府は9月、マスク着用を義務づけることなく学校に新学期を迎えさせていた。

ボリス・ジョンソン首相に対しては、屋内公共空間でのマスク着用義務をはじめとする従来の対策の再導入や、フランスなどほかのヨーロッパ各国がすでに取り入れている大規模集会へのワクチンパスポートなど新たな措置を求める声が上がっているが、同氏はこれを拒んでいる。

規制を強化する代わりに政府は、高齢者や重症化リスクの高い人々にブースター(追加)接種を受けるよう促している。昨冬のワクチン接種に比べスピードと危機感に欠ける追加接種計画を勢いづけようとしているわけだ。

ワクチン一本やりの政府は「追加接種」に躍起

ジョンソン氏は21日、「感染者数は多いが、想定の範囲内だ」とし、「われわれの計画を維持する」と語った。

その前日、ジョンソン政権のジャビド保健相は、1日当たり新規感染が数週間後に10万人を超える可能性があると警告。政府が7月に感染対策の規制をほぼ全面解除して以降、ジャビド氏はこうした警告を繰り返している。7月の規制解除日はイギリスのタブロイド各紙が「フリーダム・デイ(自由の日)」と呼ぶ一大イベントになった。

規制が解除されると、感染者数は増加するどころか逆に減少。公衆衛生の専門家の多くは驚きを隠せなかったが、これにより政府の戦略の正しさが一見、証明されたかのような局面が訪れた。ただし、このときはまだ夏で気温が高く、学校の休みも重なり、ワクチンの効果も高く保たれていた。

だがイギリスの1日当たり感染者数は、今やドイツ、フランス、スペインの感染者数を足し合わせた数の3倍になっている。これら3カ国のワクチン接種完了率はイギリスに追いつき、中には追い越している国もある。そのため多くの専門家の多くは、規制に反発するイギリス政府に方針の見直しを求めるようになっている。

「イギリスの感染はヨーロッパの中で飛び抜けて多い」。エディンバラ大学でグローバル公衆衛生プログラムの責任者を務めるデビ・スリダー教授は「イギリスはプランB(代替策)に移行すべきだ」と語る。「ヨーロッパ各国の大半はすでにそうしている」。

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