2013年または2013年度の成長の内容を冷静に分析すると、個人消費の増加分は、株高によって百貨店などの高額消費だけが大きく伸びています。これに対して、スーパーなどの一般的な消費はまったく伸びていないのです。公共投資の増加分も、消費増税の環境整備のために、昨年度の予算で大幅に上がったという経緯がありますが、今年度の予算では実質的には減少に転じています。
2014年は株高が進まないなかで、公共投資の額も実質的に減っているにもかかわらず、どうして7~9月期の成長がそこまで高くなるのか、私にはとても理解ができないわけです。私の考えがおかしいのでしょうか。それとも、大手3社のエコノミストの考えがおかしいのでしょうか。
私がこれまで拙書やこの連載等で言い続けてきたことは、日銀が大規模な量的緩和を行うと、(1)実質賃金は下がる可能性が高い、(2)格差が拡大する可能性が高い、(3)輸出は思うようには増えない、(4)日本は経常赤字国になる可能性が高まる、の主に4点になります。
2014年度は、経常赤字に転落する可能性も
実際に、(1)については、厚生労働省の毎月勤労統計において、実質賃金指数が1~3月期はマイナス1.7%、4~6月期はマイナス3.4%とマイナス幅が拡大してきています。これは、輸入インフレにより、賃金の上昇率よりも物価上昇率が高くなっている証拠です。
(2)についても同統計から、大都市圏と地方の勤労者のあいだで実質賃金には大きな開きが生じています。地方のなかでは、県ごとに見ても県庁所在地ごとに見ても、実質賃金が4~5%以上も下がっているところがけっこうあるのです。例えば、栃木県にいたっては、7%超も下がってしまっています。その実質賃金の格差に象徴されるように、大都市圏と地方、大企業と中小企業の格差拡大が重層的に進んでいるわけです。
(3)ついては、日銀が重視する実質輸出は1~3月期、4~6月期と2期連続のマイナスとなっています。輸出が増えない理由は、1月24日のコラム「1ドル120円超なら、日本経済はもたない」や、2014年3月6日のブログでも詳しく説明していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
(4)についても、財務省の国際収支速報によると、上期(1~6月)は5075億円の赤字であり、下期に所得収支で追い上げたとしても、2014年に日本は経常赤字に転落する可能性があります。
昨年から繰り返し申し上げてきたように、大方の流れがそのように動いてきています。この流れを加速させないためには、日銀は追加の量的緩和を行っては絶対にいけないのです。
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