「ポチ=犬」と勝手に解釈する人に欠けている視点 先入観がモノの見方をおかしくしてしまう

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論理にはこのほかに、「帰納法」というものがあります。これはさまざまな事実を積み上げ、その結果としてこういうことが言える、と導くものです。たとえばショウガが風邪に効くという結論を導くのに、以下のような論法を使う人もいるでしょう。

「風邪を引いたらショウガ湯を飲んだら楽になる。知り合いが言っていた。先日のテレビでも、ショウガ湯で風邪が治ったと言う人がいたし、東洋医学でも風邪にはショウガ湯を飲むことを勧めている。だから、風邪にはショウガが効く」

多くの事実を列挙して、そこから一般的な結論を導くというやり方です。統計学などはこのような推論の仕方で成り立っている学問といえるでしょう。私たちの日常会話でも、このような帰納的な推論、論法で話をしている人がけっこう多いのではないでしょうか。

しかしながら、当てはまる事実や事例が多いからと言って、必ずしもそれが一般論として正しいかどうか確定的に言うことはできません。1つでも反証や反例が出たら、その論拠は危うくなります。より科学的なのは演繹法のほうだとも言えますが、仮にショウガが風邪に効くと言いたいとしたら、以下のような3段論法がありうるでしょう。

「ショウガ湯を飲むと体温が上がることが知られている。一方、体温が上がると免疫力がアップするという研究がある。だからショウガ湯を飲むことで免疫力が上がり、風邪に効くと言える」

書き手の論理構造を把握する

演繹法も帰納法も、論理的に話をするときには有効な方法です。また、文章を読むときも、これらを意識しながら、書き手がどのような論理構造で話を展開しているかを把握することが大事になります。その際、これは演繹的な手法を使っているなとか、帰納法的な論旨展開だなと分析しながら読むことで理解が深まります。

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演繹法にしても帰納法にしても、読解力をつけるには数学力=論理力が不可欠です。それによってテキストの内容をしっかりと読むことができるようになります。まず、この論理的に読む、ロジカルに読むということが「読解力」には必要です。論理的にテキストを読めなければ、当然文意を正確に理解することは不可能です。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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