宇野郁夫・日本生命保険会長--保険経営に必要なのは長期的視点と中庸の精神


精神性の希薄化が金融危機を招いた

--講演では、「金融危機は10~20年に一度の頻度で確実に繰り返し起きている。その中で、市場は本来自己安定的に動く、あるいは市場主義は効率的に機能すると言い切ることは困難。しかし、歴史上、市場主義が今日の繁栄を築く重要な基礎であった」と語る一方で、「市場主義が行きすぎて、避けがたい崩壊を招くとしたら、社会の安定はどうなるのか。安定には、国家とのよき調和こそが大事。振れすぎた振り子は『中庸』に戻さなければならない」と話されました。この「中庸」という言葉が、一つのキーワードですね。

ギリシャ哲学、中でもアリストテレスの哲学の中心は「中庸」です。東洋哲学では四書五経の中にも「中庸」がありますが、これはアリストテレスと一緒、要するに真理は真ん中にある。経済の歴史から見ると、国家による経済運営に行き詰まって、自由化、規制緩和が始まり、その振り子が行きすぎて「市場原理主義」になっていったが、それを真ん中に戻すことが必要なんです。

中庸という言葉は、英語の本では大抵「Moderation in all things」。これでは弱い感じがします。そこでアリストテレスの「中庸」である「ゴールデン・ミーン(Golden mean)」を使いました。meanは「真ん中」。これが文明の基本であって、東洋哲学の「中庸」とほぼ同じなんですね。

それからもう一つ足らないのは、精神性の高さ。儲かればいい、自分さえよければいいという考えは問題です。今回の金融危機の大きな特徴は、現代社会を覆う精神性の欠如だと思います。たとえば、金融工学は、リスク・リターンを計測する究極のツールであると見なされたが、実は複雑な金融商品のリスクを「隠す」だけだったことがわかった。規制緩和、市場開放政策は、利益誘導型経営の結果、「カジノ資本主義」に至ってしまった。

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