ラーメン好きな人も知らない「味の地域性」の深奥 名店の追随だけでなく転勤者の文化もあった

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ご存じのように、ラーメンの味は地域によって多種多様。味付けには味噌汁文化やそば・うどん文化の影響もあった。味の由来を追求すると、次の区分になるようだ。

(1) ご当地由来(人気店追随)型

「各地域には元祖と呼ばれる店があり、それを模倣する形で店が増えて地域文化となっていきました。ただ、ご当地ラーメンには10年や20年の歴史が必要です」(大崎さん)

最も有名なのは、やはりとんこつラーメンだ。ラーメン通には知られた話だが、発祥地は博多(福岡県福岡市)ではなく同じ県の久留米市だ。「南京千両」(1937年創業)が元祖で、その後に屋台発祥の「三九」の味が評判となり広まったと言われる。

それがなぜ、一般イメージではとんこつラーメン=博多になったのか。

「情報発信力の差が大きいでしょう。福岡市は県庁所在地で現在の人口は約150万人。昭和時代に九州の玄関口・博多駅が東京・大阪と新幹線でつながり、平成初期に開業した地下鉄福岡空港駅から博多駅までの交通の便もよい。人口も30万人規模で博多からも距離がある久留米市とは段違いの発信力だったのです」

九州一の大都会・福岡市の市街地(2019年、筆者撮影)

また、福島県の喜多方ラーメンの元祖は「源来軒」(1927年創業)で、その後「満古登(まこと)食堂」「坂内(ばんない)食堂」の味が広まった。人口規模に比べて喜多方市のラーメン店数は非常に多い。

喜多方の人気店「あじ庵食堂」外観と「ラーメン」(写真:大崎裕史氏提供)

昭和最強チェーンは「町中華」として健在 

(2) チェーン店由来型

チェーン店由来の文化もあった。現在の二大チェーンとして名前が挙がる「幸楽苑」(本社・福島県郡山市)、「日高屋」(埼玉県さいたま市)は店舗数が400店規模だ。700店以上の店舗数がある「餃子の王将」(京都府京都市)は定食のイメージも強い。

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