ラーメン好きな人も知らない「味の地域性」の深奥 名店の追随だけでなく転勤者の文化もあった
朝夕は肌寒く、ラーメンが食べたくなる季節が近づいてきた。好みの味は人それぞれだが、今回はラーメンの味覚を「地域文化」の視点でみていきたい。
コロナ以前、札幌取材の際に現地を歩いて気になる光景があった。せっかくなのでご当地ラーメンを食べようと思ったが、以前よりも味噌ベースの店が減り、とんこつベースの店が増えたと感じたのだ。お気に入りの味噌ラーメン店(道内資本)が閉店した時もあった。
札幌市は人口約200万人、ラーメンの聖地で各地の味も集まるが、とんこつベースといえば九州発祥だ。どんな理由でこうなったのだろうか。専門家の意見を踏まえて考えた。
実は札幌ラーメンは、とんこつベース
まずは「とんこつ味が札幌で存在感を高めているのではないか?」を聞いてみた。
「札幌で存在感を高めたとはいえません。実は、もともと札幌はとんこつラーメンの文化です。ご当地の味噌味やしょうゆ味もベースはとんこつが多い。味噌やしょうゆがブレンドされるので、ラーメンの種類では味噌ラーメンやしょうゆラーメンとなるのです」
ラーメン評論家としても活動する大崎裕史さん(ラーメンデータバンク会長、日本ラーメン協会副理事長)はこう話す。「出汁の基本はとんこつ、とり、煮干し」だという。
さらに「大きく分けて、東日本は煮干しのしょうゆベースで、ちぢれ麺も多い。一方、西日本はとんこつベースで、特に九州は圧倒的にそうです」と語る。九州の中でも大分県は鶏肉文化だが「ラーメンに関してはとんこつベースで他県と変わりません」(同)。
東西の境目は「ラーメンに関してはバラバラ」だとか。なお、うどんの汁は境目が比較的明確で、カップ麺の「どん兵衛」(日清食品)の汁は、関ヶ原で東西に分かれると聞く。
ちなみに日本3大ラーメンは「札幌ラーメン・博多ラーメン・喜多方ラーメン」が定説だ。喜多方が入ったのは、日本で最初に「ご当地ラーメン」と名付けて注目が高まったのもある。当地の基本はしょうゆ味のとんこつベース、煮干しをブレンドする店も目立つ。
インターネットで検索すると「博多ラーメン、札幌」という情報も多く出てくるが、その逆の「札幌ラーメン、博多」は少ない。だが後述するが、かつては札幌ラーメンが各地に浸透した時代があった。
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