アマゾンが17年前から「パワポ禁止」する深い理由 花形職種も容赦なく自動化する「変革」の精神

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EWR9では、これまで存在しなかった職種を次から次へと耳にすることになった。

ロボティクスフロア・テクニシャン、アメニティー・プロフェッショナル(ロボットが落とした商品を掃除する)、ICQAメンバー(棚の品物を数えて、システム上の数と合っていることを確認する)、クォーターバック(上階からロボティクスフロアを監視する)など。

アマゾンは20万台のロボットを増やしたと同時に、人間の仕事も30万個増やしたのだ。

アマゾンの自動化推進は必ずしもアソシエイトを解雇することにはつながらないが、彼らに対してつねに変わりつづけることを強制する。変わりつづけることは退屈しない反面、消耗するものだ。アマゾンでは、ある日やっていた仕事が次の日にはコンピューターやロボットに置きかえられても不思議ではない。

つねに変わりつづけることは、変化にうまく対応できない人には過酷かもしれないとベゾスも認めている。

「花形職種」にも自動化の波

アマゾンは「ハンズオフ・ザ・ホイール(ハンドルから手を放す)」構想のもとで、社内の多種多様な事務作業を自動化している。

アマゾンには、フルフィルメントセンターでの処理をスムーズに進めるため「ベンダーマネジャー」という職位がある。

たとえばある洗剤メーカーを担当するベンダーマネジャーは、各フルフィルメントセンターに「どのくらいの量の洗剤を配置するか」「必要な時期はいつか」「1ユニットいくらで仕入れるか」などを割り出す。それから、メーカーと価格交渉をして発注する。

この職位は以前、社内であこがれのものだった。面白くて人間関係が築けて、世界トップクラスのブランドと接するきっかけになる仕事だったからだ。

しかしアマゾンではつねに、変化が近くに潜んでいる。

アマゾン幹部たちは「予測・値付け・購入」を含む旧来のベンダーマネジャーの仕事を自動化することに決めた。

アマゾンのベンダーマネジャーは、決定の際に単に機械学習アルゴリズムの予測を参考にするだけでなく、自動化システムに仕事をやらせるように指示された。

このようにして、ベンダーマネジャーの仕事は大幅に変わった。ベンダーマネジャーは、いまや実行者というより監査人だ。

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