アマゾンが17年前から「パワポ禁止」する深い理由 花形職種も容赦なく自動化する「変革」の精神
GOの背景にある物語は、ハードウェアとプログラムにとどまらない。それは何よりも、目には見えないアマゾンならではの企業文化の成果なのだ。
アマゾンでは、ジェフ・ベゾスが変革を社内に行き渡らせていて、GOなどの新しい実験的企画の創造を会社のビジネスの中心にすえて、主要なアマゾン・ドットコム(ドットコム)の運用と並べて重要視している。
アマゾンに属するすべての人はヒエラルキーの最上層から最下層に至るまで、誰もがアイデアを出せる。そしてベゾスはできる限りすべてを自動化することで、変革の余地をさらに増やす。
ベゾスの仕事は、ただ創意工夫をうながすことだけではない。ベゾスはアイデアが大量に生まれるような仕組みをつくり、一度採用したアイデアに対しては成功に向けてあらゆるチャンスを与えてきた。
たとえばGOは当初、巨大な自動販売機として提案された。それがベゾスの検討を経て、人間の購買行動を変える力を持った存在に変身したのだ。
私たちがスピーカーや電子レンジ、時計に話しかけるようになったのは、ベゾスの変革の文化がきっかけだ。どれもアマゾンの音声AI「アレクサ」が組み込まれている機器である。
本をモニターで読むようになり、会社をクラウド上でつくるようになり、インターネットで思うままに買い物をするようになったのもアマゾンの影響だ。おそらくもうすぐ、レジに寄らずにどの店からも出ていくようになるだろう。
「変革はベゾスの燃料、彼の知性を刺激するものです。変革は彼の体に組み込まれ、アマゾンという企業の基礎になっています」と、アマゾンのワールドワイド・コンシューマー部門CEOでベゾスの片腕のジェフ・ウィルクは言う。「彼がいちばん楽しそうに見えるのは、創意工夫や洞察、革新、それから先進的な思考に出合ったときですからね」
2004年「パワポ」を全社で禁止
アマゾン内のすべての新プロジェクトは文書で始まる。2004年に、ジェフ・ベゾスがパワーポイントの使用を全社で禁止したからだ。ベゾスによればパワーポイントは「アイデアをもっともらしく言いつくろうことができる」ため、欠点があったり不完全なコンセプトでも、プレゼンテーションの時点では気づかないことが多いという。代わりに、新しい製品やサービスについてのアイデアを完全な文と段落で構成された文章にするようにとアマゾニアン(アマゾンで働く人々)に求めた。
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