アマゾンが17年前から「パワポ禁止」する深い理由 花形職種も容赦なく自動化する「変革」の精神

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新プロジェクトの文書は、未来を舞台に提案する製品がどんなものかについて、まだ誰も何もしていないうちに事細かに説明するものだ。

アマゾニアンたちは、これを「さかのぼって作業する」と呼ぶ。まず完成品を思い描いて、そこからさかのぼって取り組んでいくわけだ。

この文書は上限6ページで、行間を空けずに11ポイントのカリブリ・フォントで印字され、提案する新製品やサービスについて伝えたいことがすべて詳細に書かれる。

6ページ文書を書くのはSF小説を書くのに似ていると、ある元アマゾニアンは言った。

「それは、未来を舞台にした将来そうなると信じているものの物語、存在しないものについての物語です」

実際、6ページ文書にはフィクションも含まれる。提案する製品を世界に向けて発表するプレスリリースや、その製品の導入を歓迎する経営陣の声などが創作されることも多い。

6ページ文書が承認されると、提案者に予算が与えられ、人員を集めて、描いた夢を形づくることになる。そして変革をうながすために、6ページ文書を書いた本人をそのアイデアを実現するための責任者にする。それが重要なのだ。

この仕組みのなかで、アマゾニアンはプロジェクトの成功に向けて励む。6ページ文書を通してつねに改善し、調整し、創意工夫する。そしてベゾスは、彼らの活動をうながす役割を果たす。

アマゾンを支える20万台のロボット

アマゾンが変革に集中するために活用しているのが、ロボットだ。

ベゾスは、より創造的な仕事をする自由を従業員に与えるために、できる限りあらゆるものを自動化しようとする。

アマゾンは過去8年にわたって、人間とロボットの協働の方法を探ってきた。2012年3月には、配送センターで使われるロボットのメーカー「キバ・システムズ」を買収し、それ以来驚くべきスピードでロボットの配備を進めてきた。

現在は約80万人の人間の従業員に加えて、20万台以上のロボットを「雇用」している。近隣のニューアーク・リバティ国際空港のコード名をとってEWR9と名づけられた倉庫では、約2000人が数百台のロボットと働いている。

さらにロボット技術の進歩によって、アマゾンは配送センター以外の配送業務の中核部分も自動化しようとしている。

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