苦戦ルノアールが「郊外のパン屋」出店に託す反攻 都心のカフェでは「紙たばこ客」の取り戻し狙う

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都心一極集中で苦戦を強いられたルノアールにとって、リスクヘッジのために新たな立地へ店舗網を広げることは喫緊の課題だ。

「当面、山手線の内側などの都心には店舗を出しづらい。『BAKERY HINATA』でロードサイドを掘り起こし、郊外や住宅街は、フードメニューが充実している『Cafeルノアール』ブランドで店舗網を広げる。中期的には関西進出やFC展開などもにらむ」(岡崎裕成管理本部長)

店内への設置を強化中の個室型ビジネスブース(写真:銀座ルノアール)

一方、都心店に対しても手をこまねいているわけではない。主力の喫茶室ルノアールで進めている取り組みが「ビジネスブース」と呼ぶ個室型のテレワーク用ブースの設置だ。

ルノアールでは従来、カフェ併設型の「マイ・スペース」と呼ぶ貸し会議室事業を行っており、小粒ながら収益に貢献していた。だが、コロナ禍のテレワーク浸透や三密を避ける流れにより、貸し会議室需要にも逆風が吹いた。コロナ前の2019年3月期には4.56億円ほどだった同事業の売上高は、2021年3月期には、1.17億円ほどにまで落ち込んだ。

足元ではこうした流れをくみ、貸し会議室から個室型のビジネスブースへと改装を進めたり、新規で設置したりしている。ビジネスブース対応店は今期末をメドに15店まで拡大し、巻き返しを図る。

「紙たばこ客」を取り戻す

さらに既存店の強化策としてひそかに進めているのが、「喫煙客」の取り込みだ。従来の喫茶室ルノアールは、店内に紫煙が漂うような「昔ながらの喫茶店」だった。だが、改正健康増進法の施行を機に、加熱式たばこのみ分煙での利用を許可し、紙巻きたばこは全面禁止へと踏み切った。

これにより禁煙客という新規需要を取り込むことはできた反面、従来のコアな客層である「紙巻き」喫煙客が離れてしまった。

「『ルノアールさん、紙巻きたばこを再開してくれませんか』と言って去っていかれるお客さんは、いまだに多い。コロナ禍で厳しい中、これではチャンスロスにつながってしまう。であれば、しっかりと法律に基づき、今の空気環境を変えないという大前提のもと紙たばこOKの喫煙ブースを設置することとした」(岡崎氏)

9月中旬時点で、喫煙ブースを備える店舗は8店あるというが、今2022年3月期末には対応店舗数を30店にまで増やす考えだ。

コロナ禍で苦境に陥った銀座ルノアール。新規事業であるBAKERY HINATAで郊外エリアの開拓をはかりつつ、都心店のテコ入れで反攻の機をうかがう。新規事業と既存ブランド再強化を両立し、復活できる日は来るか。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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