苦戦ルノアールが「郊外のパン屋」出店に託す反攻 都心のカフェでは「紙たばこ客」の取り戻し狙う

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埼玉県さいたま市の大宮大成町にオープンしたBAKERY HINATAの1号店(写真:銀座ルノアール)

1号店の想定する月商は2000万円。12月には神奈川県座間市相武台への2号店の出店も予定する。厨房設備に一定の面積が必要になるため、今後も1号店、2号店と同様、郊外やロードサイドでの出店を想定する。

BAKERY HINATAについては「5年をかけて20店体制を目指す」(渋谷氏)。2021年3月期末のルノアールの店舗数が102店(前期末から15店減少)ということを踏まえれば野心的な目標といえ、新規事業への本気度がうかがえる。

ルノアールが郊外立地でテイクアウト需要にも強いBAKERY HINATAの出店を急ぐのには、祖業であるカフェ事業の苦戦がある。

コメダにつけられた大差

店内利用が主流のカフェ業界は、コロナ禍では総じて苦境に立たされているものの、その程度には濃淡がある。中でも奮戦したのが、「珈琲所コメダ珈琲店」などを展開するコメダホールディングスだ。

フランチャイズ(FC)が全店の約95%を占める卸売りビジネスであり、人件費や賃料といった固定費はFC店が持つため本部負担が軽い。店舗網は発祥地である中京エリアだけでなく、東日本や西日本など広範囲に分布。また、都心店では駅から少し離れた場所、郊外でも生活道路沿いと、コロナ影響が軽微なエリアへの出店が主だったことも追い風となった。

一方、ルノアールはその真逆だ。昨年退店した熊本県のFC店をのぞき、全店が一都三県に集中し、直営店での運営。さらに、首都圏の中でも繁華街やビジネス街の駅近エリアへの集中出店が基本方針だった。

コロナ前はこの戦略がうまくはまり安定した収益を生んでいたが、感染拡大で一気に暗転。都心部の人出減少により大苦戦を強いられた。

戦略の違いによる明暗は2020年度の決算に顕著に表れた。コメダが売上高288億円と、減収でこそあったが前期比7.6%減にとどめたのに対し、ルノアールは41億円と同48.1%減。当期純利益も、コメダは36億円(前期比32.9%減)と黒字を堅守したが、ルノアールは23億円の赤字(前期は0.5億円の黒字)だった。

直近の2021年8月の月次データをみても、コメダがコロナ前の2019年8月比で8.4%減と健闘する一方、ルノアールは同55.2%減と厳しい。

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