売れ筋飲料「茶系、炭酸、有糖・無糖」の選ばれ方 その時の気分で「リラックス」と「リフレッシュ」

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前後編の2回で見た話を整理しよう。状況としては「大きな流れでは無糖の支持が続きますが、消費者はその時の気分に応じて有糖も楽しみます」(サントリー食品の多田さん)。

多田さんには、担当の「伊右衛門」以外に市場の傾向も聞いてみた。

「伊右衛門」の525ミリリットル容器と195ミリリットル容器(写真:サントリー食品インターナショナル)

たとえば、夏の麦茶飲料などは600~650ミリリットルの増量も出回るが、「ジョージア」のように200ミリリットル未満の小容量も発売される。消費者心理はどこにあるのか?

「基本的には大は小を兼ねると思います。特に夏場はごくごく飲みたいですよね。ただ、少しの量で気分転換を図りたい心理はあるでしょう。

また、コロナ禍で支持されたのが衛生意識。伊右衛門も『お茶、どうぞ』(195ミリリットル)を出しましたが、想定の3倍売れた。一般消費者もそうですが、クルマのディーラーや住宅展示場などの来店客向けに、従来の急須で淹れるお茶の代わりに重宝されたとも聞きました」

気が滅入る生活で、清涼飲料も「エンタメ化」

多田さんは「飲料を飲む意識には止渇以外に、大きく分けて『リラックスとリフレッシュ』があります。ミルク系はリラックス、炭酸系はリフレッシュです。緑茶はこの2つに加えてヘルシーもあるのが強い」と説明する。

以前からもあったが、コロナ禍で強まったのが「飲料のエンタメ化」だ。

「多くの社会人は取引先の訪問や出張も制限されて在宅勤務が増えました。そうなると身近な飲料でエンタメ化を行ったりもします。瞬間リフレッシュで強炭酸やエナジードリンクを飲んだり、逆に一息ついたら抹茶ラテなどで癒したりもします」(同)

他社の担当者からも「消費者のその時の気分がどんどん多様化している」と話を聞いた。

マーケティングや商品開発現場の共通認識に「背徳の飲食は楽しい」というのもあるが、日本の消費者はどこかでバランスを取ろうとする。こってりした食事と一緒に無糖飲料を飲んだり、お酒を飲みすぎたら別の日に野菜飲料を飲んだりもする。

清涼飲料市場は約5兆円の巨大市場だ。消費者の興味・関心はどこにあるのか。今後もメーカー各社はその本音を探り、商品を通じて訴求していく。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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