くみ : そうね。職種などにもよるのだけど、たとえテレワークで問題なく仕事ができる職場であっても、「オフィスに来ていない=仕事していない」と感じる人たちは一定数いて、コロナの状況下でもあまりその感覚が変わっていない人も見かけた。一方でテレワークにすっかり慣れてしまって、以前のように毎日出勤して働くのが想像できないという人もいるわね。
子どもと夕食を一緒にできることの意味
エマニュエル : 仕事への影響もそうだけど、家族関係や社会生活、恋愛関係への影響も大きかったよね。
コロナ以前であったら、民間の管理職なんかは19時前に退社するのはなかなか難しかったと思う。日本の企業と比べたら19時退社なんて早いかもしれないけれど、子どもが寝る前に会うには少し遅すぎる時間だ。子どもが夕食を食べ終わるかぐらいの時間に帰ってきて眠る前におやすみを言うぐらいしかできなかった。
それが、テレワークが始まってからは、学校が終わる17時、18時から子どもに会えるし、家で子どもと昼食を一緒に取る機会も増えた。この変化はとても大切だと思う。特に夕食を一緒に食べて、親と子がたくさん話す時間は親子関係にとても影響がある。今日1日あったことをよく話すようになることで親は子どもの学校生活をよりよく知れるし、何気ない会話でも子どもの話す力の向上にもつながる。
例えば、7、8歳のころに1日あったことをわかりやすく簡潔に話せる能力があったら、その後仕事上でもプライベートでも即興でスピーチをするのに苦労しなくなるだろうね。レトリックは習うよりも実践で身につけるものだから。くみは覚えてるかわからないけど、前にこのことについて記事で話したことがあったよね(「日本とフランス、夕食の風景はこんなに違う」)。
でも、もちろんこれは子どもが学校に行くという前提での話だよ。最初のロックダウンの時のように休校だと、親が子どもに学校の代わりに勉強をみなければいけないので、そうなると親には多大なストレスがかかる。そのことは、くみはどう思った?
くみ : 私のまわりにも子どもの面倒を見ながらテレワークしてる人たちがいたわね。オンライン会議を設定しようとしても子どもの学校の時間との関係に合わせて調整することになったり、会議中に子どもが乱入しないようにするなど大変だと聞いた。一方で、私は母が専業主婦だったから共働きの両親と暮らすことがほとんどなフランスの子どもたちの普段の生活は想像するしかないのだけど、でも私自身の体験から言うと、学校から帰ったらつねに親が家にいていつでも何か話せるという関係は子ども心にも安心感があったと思う。
もちろん、個人的には女性も希望するキャリアを追い続けることができる社会が理想だと思ってるけど、だからこそテレワークなどをうまく取り入れて、キャリアを続けながら家族との時間も多く持てるような生活をできることはとても大切な気がする。