高値圏「仮想通貨」始めたい人が絶対知るべき盲点 国際金融に精通する作家・黒木亮が教える本質

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冒頭で、今後仮想通貨の相場を押し上げる要素をいくつか挙げたが、逆に押し下げる要素も多い。それら下落要因の動向を注視すべきことが、肝に銘じておくべきことの3つ目だ。

まず各国中央銀行によるデジタル通貨の発行がある。ステーブルコインを除き、仮想通貨のほとんどは資産の裏付けがなく、思惑によって価格が乱高下する。

これに対して、国家の信用力(徴税権)が裏付けになっている法定通貨は価格が安定しており、それがデジタル化されたデジタル通貨も同様だ。

現在、80カ国以上の中央銀行がデジタル通貨の研究や実証実験を進めており、中国は2022年にも発行する方針である。発行されれば、送金の簡便性や資産貯蔵価機能に関し、仮想通貨を圧倒することは間違いない。

世界各国で規制を強化する動き

次に、各国の規制強化の動きだ。仮想通貨に関しては、包括的な規制の枠組みが存在する国はほとんどなく、今後、世界中で規制が実施され、投資家離れにつながる可能性がある。

今年6月、日米欧などの金融監督当局や中央銀行などで構成するバーゼル銀行監督委員会は、銀行の自己資本比率規制における仮想通貨の取り扱いに関し、リスクウェイトを1250%とする規制案を公表した。これは8%の自己資本を維持するためには、保有する仮想通貨と同額の自己資本を積むことを義務付けるもので、銀行が仮想通貨を保有するのを難しくする。

中国政府は、仮想通貨は社会を不安定化させるものと捉えていて、マイニングを全面的に禁止し、金融機関が仮想通貨業務を行うことも禁止している。アメリカのSEC(証券取引委員会)のゲンスラー委員長は、消費者保護とマネーロンダリングなどの犯罪防止の観点から、仮想通貨に対する規制を強化する考えを打ち出し、イエレン財務長官も規制の枠組みの必要性に言及している。

日本の金融庁は、仮想通貨取引業者を登録制にしたり、仮想通貨のデリバティブ取引を金融商品取引法の適用対象にしたりして、徐々に規制を強化している。インド政府は、仮想通貨の保有の規制にまで踏み込む方針を打ち出していたが、最近、禁止から規制へと方向転換した。

世界的な規制強化とは別に、今月からビットコインを法定通貨にしたエルサルバドルの試みが失敗に終われば、仮想通貨への信認を低下させる可能性がある。IMF(国際通貨基金)や格付会社は、エルサルバドルの試みは、経済の安定を脅かし、消費者をリスクにさらすと批判している。

エルサルバドルは、政府公式の電子ウォレットをダウンロードした人に30ドル相当のビットコインをボーナスとして配付したが、人々はこぞってATMから米ドルを引き出そうとしたという。仮想通貨は投機以外に使い道がないので、筆者も同国の試みは失敗に終わると思っている。

パチンコ玉を500万円とか700万円で取引する世界へ、一攫千金を夢見て入っていくのは個人の自由だが、そこは海千山千のワイルド・キャピタリズム(無法資本主義)の世界だと認識しておくことが必要だ。

黒木 亮 作家

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くろき りょう / Ryo Kuroki

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。大学時代は箱根駅伝に2度出場し、20キロメートルで道路北海道記録を塗り替えた。ランナーとしての半生は自伝的長編『冬の喝采』に、ほぼノンフィクション の形で綴られている。英国在住。

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