高値圏「仮想通貨」始めたい人が絶対知るべき盲点 国際金融に精通する作家・黒木亮が教える本質

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なぜ本質的な価値がゼロなのか説明しよう。仮想通貨は「マイニング」によって生み出される。マイニングは、仮想通貨の売買などさまざまな取引情報(最近は不動産取引や食品の原産地・材料のトレースなど)を「ブロックチェーン」と呼ばれる分散型台帳につなぐのに必要な計算作業だ。

具体的には、それまでの取引を暗号化して新たなブロックを作り、既存のブロックにつなげるのに必要な「ナンス」と呼ばれる数値を見つけ出す作業で、何組ものマイナー(採掘業者)が競争し、最初に見つけた者に報酬として一定量の仮想通貨が与えられる。

それならば、ブロックチェーンの利用者から仮想通貨の保有者に対して、配当や金銭が払われてしかるべきだが、驚くべきことに、そんなものは支払われず、仮想通貨は発行された時点で、ブロックチェーンと完全に切り離される。いわばマイニング作業に対する「感謝状」にすぎない。

世界的投資家のウォーレン・バフェット氏は、「仮想通貨は基本的に価値がない」「ほかの人に売る以外は何もできない」と述べている。

バンク・オブ・イングランド(英国中央銀行)のアンドリュー・ベイリー総裁は「仮想通貨には本質的な価値はなく、投資する場合はすべてを失う覚悟が必要である」と述べ、大手米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOはビットコインを「(17世紀にオランダで起きた)チューリップバブルよりたちが悪い」と述べている。

一方、世の中には、仮想通貨に対して好意的なコメントをする人々もいる。しかし、よく見てみると、そういう人たちはたいてい業界と何らかの利害関係を持っている(取引所の経営者、アナリストなど)。彼らは、仮想通貨をブロックチェーン、デジタル通貨、キャッシュレス決済などのメリットとともに語り、有用性を印象づけようとする傾向がある。

なぜそういうことをするかというと、儲かるからだ。仮想通貨の取引所のマージン(手数料)は、資産の種類や取引量によって異なるが、だいたい取引額の2%から10%という他の資産の取引とは比較にならないほどの高水準である。

肝に銘じておくべきことは3つある

仮想通貨の取引を始めるにあたって肝に銘じておくべきことは3つある。

1つ目は、いずれどこかの時点で価値がゼロになる可能性があるということだ。したがって長期のホールド(保持)という投資戦略はありえず、つねにバイかセルの短期の取引に徹しなくてはならない。

米系投資銀行ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン前CEOは、「(一晩で)20%も値が動く代物を通貨とは思えない。これは不正を犯すための手段だ」と述べているが、ゴールドマン・サックスは仮想通貨のトレーディングを行なっている。本質的な価値があろうがなかろうが、儲けられればいいのだ。これはポートフォリオの一部を仮想通貨に振り向けているアメリカの年金基金なども同様のスタンスだ。

仮想通貨はこの世の投資対象の中で、最も値動きが激しく、それゆえ投機にはうってつけのツールである(ボラティリティが大きいほど価値が高いのは、オプションなども同じ)。

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