ざっくり言えば、昭和後期には、小学生が野球をしようと思えば、「野球ごっこ」「学童野球」「リトルリーグ」「ボーイズなどの硬式野球」と4つの選択肢があった。
この時期、夜のゴールデンタイムではどこかの民放局で「巨人戦のナイター」が放送されていた。朝、登校した男子の最大の話題は「昨日、ひいきのチームが勝ったか、負けたか」だった。
多くの男の子はまず「野球ごっこ」で野球の楽しさを知り、自らの能力や親の理解、経済力などによって「学童」「リトル」「ボーイズ」へと進んだ。「野球ごっこ」をした子どもの実数はわからないが、それを含めれば小学生の野球の競技人口は非常に多かったのは間違いない。
「野球離れ」で競技人口が減少
プロ野球がナショナルパスタイムであった時代は、21世紀初頭まで続いたが、Jリーグの台頭や、他のスポーツの選択肢の増加などによって、野球人気はこのころから急速にしぼみ始めた。プロ野球中継がキラーコンテンツではなくなり、地上波から「ナイター中継」がほとんど姿を消した。小学生の男の子が翌朝、教室で「昨日のナイターの結果」を口にすることもなくなった。
同時期に「公園でのボール遊びの禁止」が全国に広がり、「野球ごっこ」はほぼ絶滅した。「野球離れ」の進展によって、「学童野球」の競技人口も激減した。さらに「リトル」「ボーイズ」などの競技人口も減少した。
そんな状況になったために、親が子どもに野球をさせようと思うと、どんなレベルの子であっても最初からユニホームを着て、本格的に野球をするチームに入れざるをえなくなったのだ。
冒頭に紹介した新聞記者の「僕らが子どものころは、近所の子どもと野球遊びをする段階があってから野球チームに入ったけど、今はそういうのがなくていきなりマジな野球だからちょっとかわいそうだね」は、こういう状況を物語っているのだ。
今の学童野球の大会では、野球の基本動作がまだできていない低学年の子どもまでかき集められたようなチームも試合に出てくる。そういうチームが本格的な指導をしている強豪チームと対戦するケースも増えているのだ。
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