強豪チームの指導者の多くはいまだに「勝つことがすべて」という価値観を持っているから、弱小チームを蹴散らすために盗塁を乱用する。強いチームはそのほうが楽だろうが、弱小チームはみじめな敗戦を繰り返す。今の少年野球に見られる「盗塁乱用のワンサイドゲーム」は、子ども世代の野球人口の激減を背景として進行しているのだ。
少年野球も含めた軟式野球を統括する、全日本軟式野球連盟(全軟連)の宗像豊巳前専務理事は、昨年1月、野球競技人口の減少などの事態を打開するため、学童野球の球数制限など改革案を打ち出した。その中には、「盗塁数規制(1試合3~5回)、パスボールでの進塁なし」という項目があった。「走り放題」の現状に、全軟連としても危機感を抱いたのだろうか。
全軟連「野球障害予防と指導者養成の両面から議論」
コロナ禍によって、小学校の全国大会である「高円宮賜杯・全日本学童軟式野球大会」が1年延期になるなど、軟式野球も大きな影響を受けた。改めて全軟連に問い合わせをしたところ、以下の回答があった。
「現在、本連盟医科学委員会において、選手の肘肩障害を中心とした野球障害予防の観点でルール改正の検証を行っており、その項目の一つとして、『盗塁制限』も含んでおります。最終的な改正に係る結論にはもう少々時間を要しますが、本連盟では、野球障害予防と指導者養成の両面から学童野球の健全化について、議論を進めておりますので具体的な見解については、検証結果により判断をすることとしております」
もし全軟連が「盗塁禁止」の通達をすれば、公式戦はその方向で行われることになるが、それ以外の試合で指導者がこれを順守するかどうかはわからない。しかし、すべての小学生に「野球の楽しさ」を実感してもらうためには、現実に即した改革は必須のことだろう。
コロナ禍を経て、野球だけでなくスポーツ界は大きく変わらざるをえないが、大人たちの賢明な判断を期待したい。
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