古田新太「役作りはしない」と言い切る明快な理由 鮮烈な個性と存在感を放つ役者の思いとは?

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──その距離感こそが、どんな役柄でも自然に演じ分けできる秘密なのでしょうか。

古田:役者さんってだいたいカラーが決まっていて、同じような役が来ることも多いんです。でも幸いなことに、オイラはプロデューサーさんなりキャスティングの人たちなりに、いろんな役を振ってもらえている。“あ、ちゃんとホームレスに見えてるんだな”とか、“警察署長に見えてるんだな”と。だったらこれでいいやって。なるべく何もしない、自分から何も足さないんです。

──余分なものを足さない、と。

古田:というのが、早く帰れるコツかな!

──ワハハハ! 人生論に聞こえていたんですが、早く帰るコツでしたか。

古田:そうです。オイラたちはOKのために生きてるから!

古田さんを前向きにした考え

──OKをもらえた瞬間が、最高の喜びだったりするんですね。

古田:はい。でも、昔はそれがわからなかった。映画のお仕事がよくわからなかったんです。誰が喜んでるのかわからないから。でも途中からね、“あ、違うんだ、カメラさんが笑って、音声さんが笑って、監督に大きな声でOKって出してもらうためにやってるんだ”という風に考え方を変えたら、前向きになれた。

(c)2021『空白』制作委員会

──あ~、なるほど。舞台や映画、ドラマと表現も演じる環境も全然違うけれど、スタッフに喜んでもらうという点では皆一緒……。

古田:そう。仕事によって全然違うから。舞台は1カ月~2カ月稽古して、ある程度答えが出た状態で本番を迎えて、そして目の前にお客さんがいるから、そこで答え合わせができるわけです。だけど映画は違う。これ(『空白』)だって1年半くらい前に撮影が終わってるから、記憶も定かじゃないし(笑)。でもできあがったのを見て面白いと思ってもらえたら、映画屋としては勝ち。先週撮ったものが大急ぎで編集されて、今週オンエアして、視聴率がよければ、テレビでは勝ちなんだ、と。面白い、面白くない、楽しい、楽しくないのやり方が全然違う。それがわかってからは待てるようになりました。

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