古田新太「役作りはしない」と言い切る明快な理由 鮮烈な個性と存在感を放つ役者の思いとは?
──映画の場合は公開されるまで答え合わせができないんですね。
古田:はい。喜ばれているのかどうかがわからないから。自分が出ている映画は滅多に見ないんですけど、でも行ってお客さんが笑ってたら、よしって思えます。『空白』も試写は見に行ったんですよ、お客さんになったつもりで。
──どうでした?
古田:吉田監督には素直に感想を言いました。「かわいそうな人しか出てこないんですね。あんなに現場は楽しかったのに」って(笑)。
──物語の内容からすると、もっとこう、湿度の高い空気なのかと思いましたが、実は明るい現場だったと! しかし、この映画の登場人物は、みんな何か間違っているというか、視野が狭いというか、そういうところがありましたね。
古田:そう、全員が自分のことを正しいと思ってるから。
映画『空白』のテーマ
──監督は、今の時代の閉塞感とか、人々の視野の狭さを描きたかったんでしょうか。
古田:いや、それはプロデューサーかな。こういう話をやりませんかって監督に言って、じゃあキャスティング古田ってことで本書き出しますよ、って流れだと思います。
──あ、この物語は当て書きですか。
古田:監督はそう言ってましたよ。でも、オイラにはあんな部分全然ないです。娘とも仲がいいし(笑)。
──今回の映画は「父親と娘の関係」も大きなテーマだと思います。娘が亡くなって初めてその存在の大きさに気づくという痛切なシュチュエーションでもありますが、「父親にとっての娘」という関係がとても丁寧に描かれていて、身につまされます。でも男親って、娘に対して距離がつかみにくいですよね。
古田:そう、普通の父親は娘のことなんか何も知らないですね。オイラも本当に何にも知らないですから。でも仲は悪くないし、一緒に酒も飲んでます。だけど担任の先生の名前なんて知らない。映画のシーンで、娘の盗んだネイルが透明だったってことで充さん(古田さん演じる父親)はショック受けてましたよね。でも。中2の娘の爪につやがあること知ってる父親なんて、気持ち悪いですよ(笑)。そんなの知らないです。