古田新太「役作りはしない」と言い切る明快な理由 鮮烈な個性と存在感を放つ役者の思いとは?
──でも、自分の中で解釈をして、それをどう出すかは、ご自身の中での闘いですよね。
古田:だけど、それも“こんな表現をしよう”じゃなくて、この役の人は、こういうことを思っているんだろうな、ってくらいでないと。だってお芝居しているように見えたら逆に恥ずかしいじゃないですか。
なんにもしないほうが面白いなって思ってます
──なるほど。でも古田さんを観客として見るとき、私たちはその演技にすごくリアリティーを感じます。役そのものに見える。どんなプロセスを経て役に至ってるのかなと。
古田:何もしない(笑)。当然この役はどういう気持ちでしゃべっているのかくらいは想像しますけど、なんにもしないほうが面白いなって思ってます。だってゲイであったり、女装家であったりとか、そういう役が来ますけど、そんなもんテメエの中にはみじんもないですからね(笑)。だったら、そんなふうな人に見えればいいなって思ってセリフをしゃべるだけ。この役はこういうヤツだからなんて相手のことを考えずに自分だけ掘り下げたつもりになっているのは、ダサい感じがする。
──おぉ。では、役になりきるとかじゃないんですね。
古田:よく、「前の役がまだ抜けてないんです」とか言う人いるじゃないですか。じゃあ多重人格者の役が来たらどうするんだよって(笑)。これは舞台あるあるなんですけど、一幕はムカデで二幕はウシ、みたいなことって本当にあるんです。ムカデが抜けないって大変なことです!
──ワハハハ
古田:『空白』でもそうですけど、オイラは当然漁師でもないし、離婚もしていないし、娘も死んでない。どんな役作りするのって、全部頭の中で想像するしかないわけです。よくこんな質問されるんですね、モデルにされた方はいますかって。いないですよ、そんな人、周りに(笑)。
──確かにそんな状況の人はなかなかいませんね。
古田:でも、そう見えたらいいなって思っていて、そのジャッジメントを監督に委ねるというか。「そんな感じに見えてました?」「ああ、OKですよ」「あ~よかったセーフセーフ」って(笑)。