客が蒸発「成田空港タクシーバブル」崩壊のどん底 年収1000万円の運転手もいたが、今は閑散

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そんな安田さんだが、当時稼げていた空港タクシーに見切りをつけたことになる。コロナの影響を受け始めた2020年2月、3月の人の流れをみて退職を決意したという。

「あのときはまだ売り上げが3割減程度にとどまっていた。ただ、長期化することは目に見えていたので、あと数年は成田に厳しいと判断したんです。実際、2020年の夏を境にどんどんタクシーの台数も減り、知り合いも10人以上がドライバーを辞めています」

かつての果実が忘れられないドライバーも

現在はハイヤーとして独立した安田さんだが、通常業務で成田に立ち寄る機会は減った。それでも、昨夏からコロナの感染対策の一環として厚生労働省が管轄する、海外からの帰国者を自宅等の待機場所へと送迎するという「衛生ハイヤー」の登録車になったことで、成田~遠方への帰郷の仕事は定期的に入るという。場所は成田~神戸や熊本や鹿児島といった超長距離の移動も少なくない。

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「先日は神戸まで送迎して、定額料金で約20万円。熊本や鹿児島という超ロングもありましたよ。メーターでは60万を超えますが、定額で34万円でした。そんな依頼が月に何本かは入るので助かっています。

ただ、金額が大きいので聞こえはいいですが、戻りや諸経費を考えると決して効率がよい仕事ではない。実入りを考えると、2017年~2019年ごろの成田の通常時のほうが全然よかったですよ」

閑古鳥が鳴く成田空港では、今なお壊滅的な状態が続く。そんな状況下でもかつての果実を忘れられず、成田に固執する者もいるのだ。安田さんもその一人なのかもしれない。

「これだけタクシーの台数が減れば、顧客さえ回せれば何とか食いつなげます。成田には訪日客は必ず戻ってきますし、厳しい今だからこそ人を雇い、車を増やすということも考えています」

空前のバブルから、一気にどん底へ――。成田空港で生きるタクシードライバーたちは、一向に出口が見えぬトンネルをひたすら走り続けている。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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