客が蒸発「成田空港タクシーバブル」崩壊のどん底 年収1000万円の運転手もいたが、今は閑散

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2017年ごろは、国際線出口から顧客を捕まえて駐車場へ移動する白タクのドライバーを見つけることは容易だった。筆者も何度かドライバーと利用者を直撃しているが、質問を投げかけると、逃げるように車に乗り込んでいった。

その後は車の待機場所が変わったり、アプリ内で居場所を確認し、乗客が直接車を探して乗り込むスタイルが登場したりするなど、手口は巧妙化されていった。空港警察が摘発や見回りを強化しても、あの手この手と変えて白タクは生き残っていた。

そんな中国系の白タクですら、2020年春ごろからはほとんど見かけることがなくなったのだ。その一方で、コロナ禍で閑散とした空港には別の新勢力が生まれたと、先出のドライバーが続ける。

「今度はベトナム系の白タクが目立つようになったんです。中国系ほど組織化されていない印象ですが、少なくない数がいます。そして、ついには日本人の白タクも出てきたんです。景気が悪くなると、小さいパイを狙う輩が出てくる。ただでさえ少ない利用者が、違法な勢力に奪われるというのは我慢できませんよ」

東京五輪・パラリンピックの恩恵もなし

閉幕した東京五輪・パラリンピックでも成田空港のタクシーが恩恵を受けることはなかった。五輪関係者は入国後各施設やバスターミナルまで基本はバスで移動するため、タクシー利用はほぼなかった。一時期の5台よりは台数は動いており、現在は30台程度だというが、それでも先行きが見えない日々が続く。

2020年の春まで、成田空港で4年以上にわたって法人タクシーで営業をしてきた安田さん(仮名・50代)も、同じように成田はタクシーバブルだったと話す。

「ピークは2018年~2019年にかけて。私の場合はマックスで成田→東京を6回輸送しました。一日の水揚げでいうと、15万超えです。当時はUber(ウーバー)アプリの利用者も多く、そこからも拾えた。ウーバーだけで50台ほどが待機している状態でしたよ。

私の場合は一日平均でだいたい3~4回は都内まで送迎していましたから、平均的に8万~10万前後を売っていた計算です。年収ベースでも700万~800万クラスのドライバーもわんさかいた。稼ぐ人の中には1000万プレーヤーもいましたから。あのときはちょっとした小金持ちでしたね」

次ページそんな中で安田さんは退職を決めた
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