客が蒸発「成田空港タクシーバブル」崩壊のどん底 年収1000万円の運転手もいたが、今は閑散

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2010年に278万円だった全国のタクシー運転手の年間賃金推計額は、2016年に332万円に上昇。2019年には357万円と、実に80万円近い伸び幅を見せている(全国ハイヤー・タクシー連合会調べ)。この数字はタクシーの母数や人員が減ったことにも関係するが、単純にインバウンド客を中心とした利用者増の影響も大きい。

それを象徴するように、新型コロナウイルスが蔓延した2020年には東京、神奈川、京都、奈良といった観光客が多く訪れる県のドライバーの収入は軒並み大幅なダウンとなっている。そして、千葉県のドライバーも同様に約100万円の収入減となっていた。こと成田空港に限ればこの減少幅はより大きなものとなる、というのが筆者の感覚でもある。

ほかのエリアと異なり、空港での営業は基本的には“待ち”の一辺倒だ。つまり、利用者が多いときは自ずと数字は上がるが、そうでないときはどんな優れたドライバーであれ手の打ちようがないともいえる。成田の外国人利用者が約6割減となったコロナ後の状況は、想像にかたくない。吉村さんに現在の状況について聞くと、ため息交じりにこう嘆く。

「今は1万5000円もいけば御の字。1万円を切る日もざらで、水揚げ10万オーバーから、一気に日本で一番落ち込み幅が激しい場所になったというわけ。ナンバーを切っちゃった(成田空港のナンバー登録を廃止した)車も多いし、ドライバーを辞めた人もたくさんいるから。それでもコロナが落ち着けば前の水準に戻るんじゃないか、という希望が捨てられないの。私なんかはそんな願望にしがみついていて、辞めたいけど辞められない」

バブルの象徴だった「白タク」

先述したとおり、2016年ごろからの成田空港はちょっとしたバブル状態といえた。それを象徴するのが、白タクの存在でもあった。許可を得ていない空港白タクの増加は、たびたびメディアでも取り沙汰されてきた。

とくに中国系白タクの勢いはすさまじいものがあった。同じくエアポートタクシーで最大規模の台数を展開した「千葉構内タクシー」のドライバーがこう説明する。

「訪日外国人のタクシー利用者が爆発的に増えても、メインは韓国や欧米系の人となる。いちばん多いであろう、中国本土のお客様を乗せることはほとんどなかった。なぜなら彼らはほぼ100%白タクを利用するからです。白タクは都内までの料金が、定額料金よりも7000~8000円ほど安い。そんな中国系白タクが1日何百台と成田に来る。だから中国人からしたら、わざわざ日本のタクシーを利用するということはほぼないのです」

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