「疲れが取れない人」が知らない脳疲労の正体 精神科医の僧侶が教える「心を整える」技術

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欧米では仏教ブームが起きています。アメリカには仏教徒は1~2パーセントしかいませんが、「仏教の教えに人生を変えるような影響を受けた」という人は10%以上もいることがわかっています。

信仰や契約というものではなく、人生の学びとして仏教が受け入れられている。これは、まさしくブッタの教えようとしたことではないかと思います。ブッダは、仏教という宗教を広めたかったのではなく、幸せに生きていくための智恵を広めたかった方なのです。

ですから、本書が欧米でベストセラーになっていることは、とても歓迎できる状況だと感じますし、実際、私が思っていたとおりのことが言語化されており、ここまで明快に語ってくれる人が現れたということに心底嬉しくなりました。

日本のマインドフルネスが10年遅れた訳

本来、マインドフルネスは日本からブームになってよいようなものですが、日本の禅は、どうしても、お寺の坐禅会でベテランの方たちが難しい顔をして坐禅を組んでいて、近寄りがたいというイメージがあり、若い人に受け入れられづらいのです。

1980~1990年代頃にかけては、社員教育という名目で、若い新入社員を無理やり禅の道場に行かせ、「1週間、根性をたたき直してこい!」という根性試しのようなことがよく行われていました。これがきっかけでまだ職場に配属もされていないのに退職してしまった人もいたそうです。同様のことは学校教育の中でも課外学習と称しておこなわれていました。

このために、今の50~60代の人のなかでも、「若い頃むりやり坐禅をやらされた」「しごかれた」というようにネガティブに捉えられている向きもあります。

さらに、1995年にはオウム真理教事件が起きました。瞑想のような修行によって信者はマインド・コントロールされ、毒物を散布して多くの人の命を奪ったという凄惨な事件です。実際には教団が信者にしたことは瞑想ではなく、洗脳だったわけですが、結果的に、瞑想も坐禅もヨガもすべて洗脳に結び付けられてしまったのです。

結果、10年前、海外でいわゆる「マインドフルネス・ブーム」になっていたときに、日本では、瞑想は、「あやしいもの」のレッテルを貼られ、敬遠されていました。ですから日本のマインドフルネスは10年以上も遅れています。

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