「疲れが取れない人」が知らない脳疲労の正体 精神科医の僧侶が教える「心を整える」技術

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これは人間という高等生物が社会生活を営むうえで大切なことですが、あまりにも内側前頭前野を活動させすぎると疲れてしまうため、時には瞑想をして休ませてあげるといいということが脳科学(神経科学)でわかってきています。

内側前頭前野と扁桃体の摩擦が大きくなればなるほど、ストレスが生まれます。するとその影響は視床下部にまで及び、自律神経のコントロール機能を乱れさせてしまうのです。

そして、これが体調不良として表れます。こういった脳の複数の箇所における衝突や乱れが、脳疲労の正体と考えられています。

食事中にスマートフォンを見ない、1日5分でも瞑想して脳を休ませるということをしていけば、少しずつではありますが着実に、自律神経の乱れも改善していくでしょう。

瞑想のすばらしいところはそれだけではありません。『モンク思考』のジェイ・シェティさんのように、瞑想を習慣にしていると、「今日は脳の働きが悪いな」とか「思考力が落ちてきたな」というように、体の症状が出る以前の、脳疲労の段階で察知できるようになるのです。

本書には、呼吸瞑想がとても大事だと書かれています。吸った息、吐いた息の両方を意識するという、呼吸に対する細かい気づきを得るトレーニングです。

瞑想によって微細な感覚に意識を向ける能力を鍛えると、普通の人には自覚できないような脳のアンバランスにも気づけるようになります。そして、「今日はデジタル・デトックスをしよう」とか「運動をして気分転換をしよう」とか、状態に合わせて早めにケアをすることができ、未病で防ぐことができるようになるわけです。

「繊細すぎる人」にこそ効果的

マインドフルネスには、2つの要素があります。1つ目は、「気づき」です。先ほど述べましたように、細かなことに気づく能力、アウェアネスです。

ただ、これだけでは、HSP(Highly Sensitive Person:感受性が非常に敏感な性質を生まれながらに持っている人)のように、繊細すぎることによって日々の生活に支障が出てしまうように思われます。

でも、マインドフルネスとHSPとの大きな違いは、「受容性」です。これが2つ目の要素で、アクセプタンスと言います。

受容性が高まっていくと、気づいたものを、あるがままに受け入れていくという心の寛容性が生まれます。実は意外なようですが、HSPの方にこそ、マインドフルネスが効果的です。

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