「疲れが取れない人」が知らない脳疲労の正体 精神科医の僧侶が教える「心を整える」技術

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つまり、すでに十分持っておられる気づきの能力はそのままに、受容性が養われてゆくために、ご自身の敏感さというものが決して欠点ではなく、生まれながらにして与えられた能力として認識できるようになるのです。

一方、気づきの能力が足りないタイプの方はアウェアネスのほうが育まれます。そしてもちろん、両方が足りない方は両方が向上することが期待されます。このように、さまざまなタイプの方に対して、マインドフルネスはとてもうまく機能します。

マインドフルネスは、最近になって導き出された新しい技法ではなく、人類が智恵をつけ、理性というものを持った瞬間から、もともと備わっていた自己調整能力だと私は考えています。

「科学」と「禅や仏教」の関係

私は、科学的な精神科医としての役割をしながら、精神世界の僧侶としての役割も担っています。一見、相反することと思われますが、面白いことに、これが矛盾しないのです。

医学部を出て精神科専門医になり、30歳になったとき、実家である臨済宗のお寺を継ぐために、最短で3年間の修行に行くことが必要となりました。

まったく違う世界に入って、坐禅の修行をやるわけですから、きっと医学の知識もすべて抜けてしまうだろうとも思いました。もう診療に復帰することもできないだろうから、精神科医としてはこれまでの経験に感謝をして、身を引くつもりでいました。

ところが、修行を終えて帰ってきた頃、以前働いていたクリニックの院長先生から、週に1度でいいから戻ってきてくれませんかとお声がけをいただいたのです。お役に立てずご迷惑をおかけするのではないかと思いながらも、お世話になった院長先生のお手伝いが少しでもできればと、私は診療に戻りました。

最初のうちは、やはり患者さんとうまくお話しできなかったのですが、しばらく診療しているうちに、急に見方がわかり、自分が修行してきた禅や仏教と、精神医学がまったく同じだということに気がついたんです。

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