「疲れが取れない人」が知らない脳疲労の正体 精神科医の僧侶が教える「心を整える」技術

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特にこの1年半は、コロナ禍の影響もあります。最初は緊張感が高まり、アドレナリン、ノルアドレナリンや、ストレスホルモンのコルチゾールといった物質の分泌が増えるなどして、一時的には交感神経が活性化され、やる気が出たり、ハードに動けたりしていました。

しかし、1年以上が経過し、交感神経の頑張りも限界を迎え、逆に今度は副交感神経が立ち上がってきていると考えられます。緊張感の連続には耐えられなくなり、バーンアウト(燃え尽き)する時期に入ってきているのです。

女性の自殺者数は、近年で最も多くなってしまいました。男性もその傾向が想定されています。そしてこれからさらに自殺者が増えると懸念されています。先が見通せないという社会不安そのものも、多くの方の心に影を落としてしまいます。

ストレスが色濃くなり、情報過多で脳疲労が起きている状態。それが現代人特有の問題と言えるでしょう。

「脳疲労」の正体は自律神経の乱れ

脳疲労とは、正式な医学用語ではありませんが、メンタルヘルスの専門家の多くがその存在を想定しています。脳の機能が失調していることをもって推定される状態で、主に、自律神経の調整作用に影響が見られます。

川野泰周(かわの・たいしゅう)/臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医。1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。禅やマインドフルネスの実践による心理療法を積極的に導入している。また、2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行を経て、2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在は檀務とともに、坐禅会や社員研修、講演やメディア出演など、マインドフルネス普及活動にも取り組む。『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』『ずぼら瞑想』ほか著書多数(写真:筆者提供)

脳には、前頭葉と視床下部、そして海馬や扁桃体などの重要な部位があります。

視床下部は、脳の奥のほうにある自律神経のコントロールセンターにあたる部分です。そこに密接に関わっているのが、理性の中枢と言われる前頭葉です。中でも、おでこの真ん中あたりの内側前頭前野という部分は、雑念が増えると、働きすぎて疲れてしまいます。

海馬と扁桃体は、大脳の奥のほうにある、大脳辺縁系と言われる場所にあります。海馬は、記憶の中枢。過去のつらい記憶がひもづけられている部分です。扁桃体は、感情の中枢で、恐れや不安や恐怖、イライラなど、ネガティブな感情が湧き出す部分です。

理性の中枢である内側前頭前野と、記憶と感情の中枢である海馬と扁桃体。両者は神経線維でつながっており、密接に関与し合っています。ネガティブな感情が扁桃体で生じると、私たちはそれを理性の力でコントロールしようとして内側前頭前野を活発に働かせます。

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