「疲れが取れない人」が知らない脳疲労の正体 精神科医の僧侶が教える「心を整える」技術
特にこの1年半は、コロナ禍の影響もあります。最初は緊張感が高まり、アドレナリン、ノルアドレナリンや、ストレスホルモンのコルチゾールといった物質の分泌が増えるなどして、一時的には交感神経が活性化され、やる気が出たり、ハードに動けたりしていました。
しかし、1年以上が経過し、交感神経の頑張りも限界を迎え、逆に今度は副交感神経が立ち上がってきていると考えられます。緊張感の連続には耐えられなくなり、バーンアウト(燃え尽き)する時期に入ってきているのです。
女性の自殺者数は、近年で最も多くなってしまいました。男性もその傾向が想定されています。そしてこれからさらに自殺者が増えると懸念されています。先が見通せないという社会不安そのものも、多くの方の心に影を落としてしまいます。
ストレスが色濃くなり、情報過多で脳疲労が起きている状態。それが現代人特有の問題と言えるでしょう。
「脳疲労」の正体は自律神経の乱れ
脳疲労とは、正式な医学用語ではありませんが、メンタルヘルスの専門家の多くがその存在を想定しています。脳の機能が失調していることをもって推定される状態で、主に、自律神経の調整作用に影響が見られます。
脳には、前頭葉と視床下部、そして海馬や扁桃体などの重要な部位があります。
視床下部は、脳の奥のほうにある自律神経のコントロールセンターにあたる部分です。そこに密接に関わっているのが、理性の中枢と言われる前頭葉です。中でも、おでこの真ん中あたりの内側前頭前野という部分は、雑念が増えると、働きすぎて疲れてしまいます。
海馬と扁桃体は、大脳の奥のほうにある、大脳辺縁系と言われる場所にあります。海馬は、記憶の中枢。過去のつらい記憶がひもづけられている部分です。扁桃体は、感情の中枢で、恐れや不安や恐怖、イライラなど、ネガティブな感情が湧き出す部分です。
理性の中枢である内側前頭前野と、記憶と感情の中枢である海馬と扁桃体。両者は神経線維でつながっており、密接に関与し合っています。ネガティブな感情が扁桃体で生じると、私たちはそれを理性の力でコントロールしようとして内側前頭前野を活発に働かせます。
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