日本に眠る「現預金1056兆円」が宝の持ち腐れな訳

マネー力を活かすカギは日本型ガバナンス脱却に

このままでは巨大な船がじわじわと沈んでいくように縮小均衡に陥るだけだ(写真:freeangle/ PIXTA)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

アベノミクス第3の矢は目的地に届いたのか

2021年6月に発表された日銀の資金循環統計で、家計金融資産はコロナ禍での外出自粛による消費減少や株高もあり、過去最高の1946兆円と発表された。

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2012年末に発足した安倍政権において、アベノミクスの3本目の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」では、家計資産や公的年金等をリスクマネーや成長資金の提供に向かわせることが明確な戦略の1つであった。

2013年末に有識者がまとめた「金融・資本市場活性化に向けての提言」では、当時1600兆円余の家計資産のうち半分が現預金であり、また、公的年金等も多く現預金を保有していることを「眠っている」状態と指摘。潜在成長力の引き上げに向けて金融・資本市場の戦略的な構造改革が必要とされ、資金を成長に振り向けるための金融・資本市場の総合的な魅力の向上策や、アジアの潜在力の発揮とその取り込み施策が提案された。

それからもうすぐ8年。日本のマネーを取り巻く「戦略的な構造改革」はどの程度進んだのだろうか。残念ながら提言で触れられたような「2020年までに国際金融センターとしての地位を確立する」という大きな絵姿に向かった構造的変化が起きているとは言い難い。8年前より積み上がった家計の金融資産の構成は、依然としてその54%、1056兆円が現預金であり、また、金融機関側の資産は欧米と比較し圧倒的に貸出・国債の比率が高い。日本の「マネーの力」は引き続き眠り続けているようだ。

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