アメリカのアフガン撤退で中国が台湾に揺さぶり
「徐々に、そして突然に」を絵にかいたようなカブール陥落であった。バイデン大統領が決断したアフガニスタンからの撤退は、タリバンの電撃的な攻勢によるアフガン政府と30万の国軍の崩壊、そして地域のみならず世界的な地政学上の変動をもたらした。すし詰めの避難民を乗せたアメリカ軍C-17輸送機が追いすがる市民を振り落としながら離陸する映像は、世界中に大きな衝撃を与えた。
さらに、ともに戦った英仏独豪等の同盟国やアフガン国民の人権への配慮に欠けたバイデン大統領の頑なな言動は、アメリカの国益第一・単独主義を強く印象付け、撤退の正統な理由である「対中ピボット」への疑念さえ生じさせている。中国は、これを20年に及ぶアメリカの「民主化実験」の失敗であり、アメリカの信用失墜と覇権凋落の証しとして喧伝している。
環球時報は、アメリカが一方的にアフガンを見捨てたのは「台湾の将来の運命の前兆を示しているのではないか」(8月17日社説)、「アメリカは必ず最終的に台湾を見捨てる」(18日同)と書き、台湾にも揺さぶりをかけている。アフガン情勢は東アジアにも大きく影響し、日本の安全保障に直結するアメリカのインド太平洋リバランスの成否を左右する問題である。
バイデン大統領は8月16日のアメリカ国民に向けた演説で、「アフガンにおけるアメリカの唯一の死活的国益は、アメリカ本土へのテロ攻撃を防止すること」であり、「アフガン軍が自身のために戦おうとしない戦争でアメリカ軍が戦うことはできないし、アメリカ軍兵士が死ぬべきではない」と撤退を正当化した。
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