日本は、欧米と一線を画したアフガンの民主化支援に取り組んできた。その実績を踏まえ、タリバンの恐怖政治の復活に深刻な身の危険を感じているアフガン市民や在留外国人の安全確保、テロの温床化防止や女性の人権保護に、国際社会と共同した取り組みを続ける必要がある。そして、威信を傷つけられ名実ともに疲弊したアメリカを後押しし、アメリカのインド太平洋へのリバランスを確実にするため、主導的な行動が強く求められる。
まず、アメリカのCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)復帰を要請し、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)の強化を図ることだ。ASEAN諸国にテロ対策支援や経済・インフラ投資の実利を増やすことで、アメリカの信頼を回復させる。10月末のアメリカとASEANとの首脳会議ではバイデン大統領の本気度が示されねばならない。
次にQUAD(日米豪印戦略対話)の強化と拡大である。インドは、タリバン政権とパキスタン、そして両国への影響力強化を狙う中国に対する戦略を練り直していよう。QUADが対中牽制の重要な手段であることを首脳会議で再確認することが必要だ。
折しもイギリス空母が9月4日に初めて横須賀に寄港し、日米等との多国間共同訓練を実施。仏独もインド太平洋への軍の派遣を実施・計画している。このような欧州諸国の関与をQUADの枠組みに取り込むことが対中抑止に有効だ。日本は寄港地の提供や補給支援等を実施できる重要な域内国であり、英豪等との「円滑化協定」締結の促進が求められる。
日本自身の防衛力・危機対処能力の強化を
第3に、日米同盟をあらゆる分野で強化しなければならない。次期内閣は、年末に予定される2+2でガイドラインの見直し等の軍事分野のみならず、冒頭で指摘した中国の台湾への情報戦(価値観等の認知領域の戦い)や地経学的手段での日米共同・協力を具体化する必要がある。
最後に、日本自身の防衛力・危機対処能力の強化である。政府は8月23日、国際機関で働く日本人や大使館の現地スタッフを国外に退避させるため、自衛隊輸送機を派遣することを決めた。私は2003年、イラク復興支援特別措置法に基づくC-130海外派遣に空幕防衛班長として取り組んだが、当時は派遣する機体の自己防御装置(防弾板や携帯型地対空ミサイル監視用の窓)の緊急取得や機体塗装の変更、狙撃のリスクを回避する着陸方法の訓練等、泥縄式の準備に追われた。
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