共感しにくい「結婚後も恋愛したい男」の言い分 人は「寂しさ」とどう向き合うべきか

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ただし、仲間との飲み会という名の合コンには通い続けていた。卓也さん、懲りない男である。そのうちに職場の後輩女性からアプローチを受けた。10歳年下の美鈴さん(仮名)だ。社内でも有名な美人であり、結婚前に「金メダル」を獲得したいと思っていた卓也さんが拒むはずはなかった。

「その子は私が彼女と同棲していることは知っていました。それでも『毎日会いたい』と言ったりうちの近くまで来てしまったり。関係は結婚後も1年半ぐらい続いていましたが、彼女が転勤するタイミングで一度リセットしました。妻との家庭を壊す気はまったくないからです」

いつか女性から刺されそうな発言を淡々と繰り返す卓也さん。しかし、結婚してよかったと言い切る。

「妻とは関係を維持する努力は必要ないので、心に余裕と安定が生まれました。別れを予見する恐怖を感じずに済んでいます。私の場合、自分が誰かに一途であることは安定の基準ではありません」

何を言っているのかよくわからないが、卓也さんはよくも悪くも子どもっぽさを残した男性なのだと思う。恋愛に依存気味なのかもしれない。コロナ収束後は、トラブルを避けながら遊ぶために「想定問答」を周到に用意して行動する予定だという。大学と会社で鍛えた知力がこんなところに使われているとは……。

寂しがりすぎてつねに満たされていたい

筆者には卓也さんを否定する資格はない。その資格があるのは智子さんだけだと思う。卓也さんが惚れたほどの知的な女性だから、夫の志向と行動にはうすうす気づいているはずだ。それがどこかのタイミングで爆発するかもしれない。

寂しがりすぎてつねに満たされていたい、自分が「現役」であることを確かめたいと強調する卓也さん。その気持ちはなんとなくわかる。でも、欲望にはきりがないことも事実だし、追求しすぎると依存症になりかねない。

卓也さんへのZoomインタビューを終えた後、気分転換をしに入った近所の喫茶店の壁にこんな警句が書かれていた。

<寂しさが光る時もある>

人はみな孤独を抱えながら生きている。配偶者はそれをお互いに温めて慰め合える存在だけれど、寂しさが完全に消えることはない。ならばその人間的な感情に向き合って深めていけばいいのではないだろうか。卓也さんにもお勧めしたいと思った。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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