保育を「規制緩和」したらロクな事にならない理由 待機児童の解決策は家庭への直接投資しかない
長年保育分野で活動する研究者の多くは認可保育園の保育士らと連携しながら児童虐待やDVの対応を行ってきました。児相が関わるレベルでない諸問題も保育園には改善する機能がありました。しかしながらその実践を社会に提言する研究者が少ないなか、「行政や社会福祉法人運営の認可保育園は無駄が多い、NPOや株式会社に運営させればさらなる効率化になり、待機児童の解消にもなる」という専門外の識者の主張に政治家は飛びつきました。
規制は悪となり、委託費の使い方や園庭の設置基準まで‟規制緩和”になりました。園庭がない保育園、窓のない保育園、担任がおらず日々担当保育士が変わる……。
例えば園庭で子どもが体を動かすことや草木や虫を見て何かを感じることの重要性について主張した研究者に対して「エビデンスはない」と一蹴し、「窓や園庭がなくてもお散歩すれば光も浴びるし自然を感じられる」などとSNS上で反論をするアカウントも見受けられました。結果、交通事情も含め園児の散歩には危険性も少なからずあるにもかかわらず、園庭がなくても保育園が設置できるようになりました。これには、そのような環境に置かれる子どもへの配慮はなく、量を増やせという大人の視点しかありません。
良質な保育に重要なこととは?
保育の規制緩和には、早期教育や良質な保育は子どもにも効果がある、だから保育園も義務教育にすべきだなど海外のデータがよく使われます。しかし海外の保育士の待遇や一人当たりの受け持ち児童数などの比較はしません。良質な保育に重要なことをいっさい言及せず、逆に子どものために規制をしっかり守った人たちを抵抗勢力としてネット上などで攻撃します。
企業型NPOや株式会社の声が大きくなり、保育士の賃金が上がらず、ますます保育の質が悪くなってきています。しかしそれも「副業を推進している働きやすい職場」ということにすり替え、長時間勤務し疲弊した保育士に副業で生活費を稼がせるのです。
また、最近は研究者がそのような企業型NPOと結託しているような研究結果もみられます。NPOの保育園は既存保育園と質に差があるのかなどの研究で、遜色なかったというような結果です。しかしこれらの研究をよく見ると利益相反(研究者とNPO)がみられ、論文化もされていませんし、倫理審査通過したのかすら不明です。しかしこのような報告書がNPOを通じて政治家に直接届いてしまい、おかしな改革がされてしまうのです。
「子どもの良質の保育、安全のためにしっかりした規制を」と言うと、「待機児童を持つお母さんが働けなくなったらどうするんだ!」とネット上で攻撃を受けます。0~2歳の子どもに着目すると、EU各国は保育園利用率が日本より低く、10~30%程度しか通わせていません。ベビーシッター等の利用もあるのですがそれでも大して率は変わりません。しかし通わせない人についてはしっかりした保障があるのです。
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