ポストコロナ、日本の成長に絶対外せない命題 海外投資立国と国内経済のバランス戦略へ

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プラスの対外純資産残高持続はドイツと中国も同様だが、アメリカはマイナス1400兆円(2020年)で、過去10年間に約1000兆円もマイナス幅を拡大させた。日本の対外資産残高は2020年末で1146兆円、1990年代中頃の250兆円程度から25年間に4.5倍の拡大、2020年末の内訳は証券投資が約46%、直接投資が約18%を占めている。

年間の対外投資額(フロー)は総額約40兆円、対名目GDP比約7~8%が続いており、内訳は変動の大きな対外証券投資と安定的な推移の対外直接投資がそれぞれ約20兆円となっている。

海外投資の収益額は年約20兆円で、証券投資と直接投資がそれぞれほぼ同額で二分している。対外資産残高対比の投資収益率は、証券投資が約1.5%、直接投資が約5.3%と、世界的低金利を反映した低い証券投資収益率に対し、直接投資の収益率は格段に高い。また、日本の直接投資収益の約半分が対アジア投資からの収益であることも特徴である。

海外投資立国の戦略構築は急務の課題

直接投資の収益率は、他の先進国とほぼ同等と推測されるが、経済成長率の高いアジア向けのウエイトがやや高いことや、直接投資に関連した輸出やパテント収入などを考慮すると、実質的にはより高い収益率になっていることもうかがえる。名目GDPに海外投資収益を加算した名目GNI(国民総所得)はここ10年程、名目GDPを15兆~20兆円上回っている。

また、日本企業の設備投資全体に占める対外直接投資のシェアは全産業で20~25%、製造業では35%程度にも達している。海外売上高比率は全産業で35~38%、製造業では約50%と高い。日本企業は輸出(年約100兆円)だけでなく海外直接投資による海外売り上げも大きい。日本経済は、国内貯蓄が国内投資を恒常的に上回る構造となっており、海外投資立国としての戦略を構築することは急務の課題である。

アメリカの対外純資産残高は、マイナス1400兆円で、そのマイナス幅も拡大が続いているが、これはアメリカが巨額の海外資本流入を経済成長に活用していることを意味している。基軸通貨であるドルへの信認が揺るがない限り、海外からの資本流入によるアメリカの成長は可能であるし、為替リスクを負うこともないという優位性も持っている。

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