深まる米中対立「ウォール街」が直面している難題

日本も無縁ではない、制裁応酬の苛烈化に注意だ

米中対立が「アメリカ金融市場」と「香港・中国金融市場」に与えている影響とは?(写真:Kasmasov/PIXTA)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

ウォール街がアメリカを作ったのではない!

「ゴールドマン・サックスのために中国の金融市場の開放を求めることは、アメリカの優先交渉事項ではない」

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ジェイク・サリバン大統領補佐官(安全保障担当)が、大統領選挙前に記した言葉だ。同様のメッセージはバイデン大統領からも発せられる。「ウォール街がこの国を作ったのではない。中間層の皆さんが、この国を作ったのだ」。今年4月に上下両院合同会議でバイデン大統領がこう述べると、議場は拍手に包まれた。

トランプ政権には、ゲイリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長、スティーブン・ムニューシン財務長官と、元ゴールドマン・サックス(GS)幹部が中枢に入った。ムニューシン財務長官は、ライトハイザーUSTR代表と共に、米中貿易交渉の中核を担った。2020年初に調印された米中の第1段階合意では、「金融サービス」の項目で、中国金融市場における外資の出資制限の緩和等が盛り込まれた。

労働者重視はトランプ政権でも見られた。大統領選で勝つには、中西部ラストベルト(錆びた製造業地帯)での勝利が必要だ。民主、共和の両党ともに製造業労働者を重視するが、バイデン政権はこの傾向を強めた。

バイデン政権には、国家経済会議のブライアン・ディ―ス委員長や、ウォーリー・アディエモ財務次官など資産運用会社ブラック・ロックの出身者はいるが、GSなどの投資銀行の幹部は限られる。証券取引委員会(SEC)委員長に就任したゲーリー・ゲンスラー氏はGS出身だが、オバマ政権時代に米商品先物取引委員会(CFTC)の委員長としてウォール街への厳しい姿勢で注目された人物だ。

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