哲学者が語る「人がサイボーグになる」の深い意義 「ゼロ地点に立ち返る」ネオ・ヒューマンの思考

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「哲学者と科学者は、本質的には近しいもの」とは、どういうことなのでしょうか(画像:kuro3/PIXTA)
イギリスのロボット科学者であるピーター・スコット-モーガン博士は、全身の筋肉が動かなくなる難病ALSで余命2年を宣告されたこと機に、人類で初めて「AIと融合」し、サイボーグとして生きる未来を選んだ(詳しくは「人類初『AIと融合』した61歳科学者の壮絶な人生」参照)。
「これは僕にとって実地で研究を行う、またとない機会でもあるのです」
人間が「サイボーグ」となり、「AIと融合」するとはどういうことか。それにより「人として生きること」の定義はどう変わるのか。
世界で発売直後から話題騒然の『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン――究極の自由を得る未来』が、ついに日本でも刊行された。
本書を読んで「筆者のピーター氏の営みは、本来の意味での『哲学』だ」と語るのが、江戸川大学教授の荒谷大輔氏だ。その見解を聞いた。

ALS患者は「かわいそう」なだけなのか

哲学というのは、哲学書をたくさん読んで知識がたくさんあるだけでは駄目で、実際に既存の価値観を疑い、自分で考え直してはじめて意味があるものだと思っています。世の中の「当たり前」を自らの手で覆し、自らをサイボーグ化したピーターさんは、その意味で哲学者だといえるでしょう。

『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン――究極の自由を得る未来』(画像をクリックすると、特設サイトにジャンプします)

実際、『ネオ・ヒューマン』では、ALSという難病の問題を「科学技術の発展」という観点から捉え直しています。これはまったく新しい切り口ですね。

私も大学の授業で、ALSを題材にすることがありますが、ALS患者の状態については、これまで「生きる権利」と「福祉」の文脈から語られることが多かったと思います。

ところが、この本には180度違うポジティブさがあります。科学技術を駆使し、自らをサイボーグ化することで、よりよく生きる。そのために自ら社会的な投資をしていくという話になっていて、その投資の恩恵がALSではない人たちにも及ぶという視点も新しいと思います。

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