国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)をご存じだろうか。いずれも厚生労働省が所管する独立行政法人であり、旧国立病院など公的医療機関を傘下に置く。そのネットワークは国立病院機構が全国140病院で計約3万8000床、地域医療機能推進機構は全国57病院で同約1万4000床を有している。
医療に詳しい人でなければ、JCHOの存在を認識していないかもしれない。ただ、JCHOの理事長が政府対策分科会の尾身茂会長と聞けば、公的医療機関の中でも重要な位置にあると想像がつくだろう。
新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大によって、入院できずに自宅で亡くなる患者が相次ぎ、千葉県柏市では新生児が亡くなる悲劇も起きた。日本は災害同然の事態に見舞われている。
NHOとJCHOのコロナ病床は約5%
その中において、国立病院機構と地域医療機能推進機構はどれほどコロナ患者を受け入れているのだろうか。筆者が入手した資料によると、7月末時点で、国立病院機構の全国140病院の計約3万8000床のうち、コロナ病床は1854床(4.8%)、地域医療機能推進機構は全国57病院の同1万4000床のうち、816床(5.7%)。合わせてざっと5%程度にすぎない。
2機構には、それぞれよって立つ法律もある。国立病院機構法と地域医療機能推進機構法は、それぞれの21条に、「公衆衛生上重大な危害が生じ、若しくは生じるおそれがある緊急の事態に対処するため必要があると認めるときは、(厚労相が)機構に対し、必要な業務の実施を求めることができる」といった規定がある。
いま、まさに「公衆衛生上重大な危害」は目の前で進んでいる。東京都では、コロナ陽性と診断されて療養している患者約4万5000人(8月20日現在)のうち、入院できているのはわずか8.7%の3845人だ。1カ月前はこれが25.2%だった。4人に1人が入院できたのに、1カ月で10人に1人も入院できなくなった。入院やホテルなどでの療養を調整中の人は、1カ月前の1671人から、1万2000人余りに急増した。
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