「コロナ病床5%」旧国立・社保庁197病院への疑問 法律あっても病床確保は厚労相のお願いベース

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JR飯田橋駅に近いJCHOの東京新宿メディカルセンター。都内5病院で最も多い520床を有する(写真:JCHOのパンフレットより)

コロナはいつ急変するかわからない。こうしている間にも、酸素吸入が必要でも入院先がみつからないコロナ難民が救急車でたらい回しにあっている。

この東京で、国立病院機構は3病院の計1541床のうち128床しかコロナ病床に提供できていない。地域医療機能推進機構も5病院の計1455床のうち158床だ。実際の入院患者は8月6日時点で計195人と、同日に都内で入院していた患者3383人の5.8%にとどまった。災害同然の危機的な状況なのに国が関与する医療機関の対応として妥当なのかと疑問に思う。

なぜ、厚生労働相は両機構に緊急の指示を出さないのか。

8月20日、記者会見でこの点を田村憲久厚労相に聞くと、次のように答えた。

「法律にのっとってというより、いまもお願いはしておりまして、病床は確保いただいております。無理やり何百床空けろと言っても、そこには患者も入っているので、転院をどうするという問題もあるので、言うには言えますが、実態はできないことを言っても仕方がない。極力迷惑をかけない中で最大限の病床を確保してまいりたい」

8月20日の閣議後記者会見で話す田村憲久厚労相

病床確保に強制力を持たせる法整備の議論が進む中で

要するに、あくまでもお願いベースなのだ。いま、民間病院を想定して、病床確保のために強制力を持たせる法整備をするべきだとの議論もある。すでに今年2月の感染症法改正によって、厚労相や都道府県知事が医療機関などに対して医療提供を勧告できるようになった。罰則はないが、正当な理由がなく従わない場合は施設名などを公表できる。

一方、両機構の法は、機構は「求めがあったときは、正当な理由がない限り、その求めに応じなければならない」とも定めている。にもかかわらず、「お願い」しかできないのが実情なのだ。要するに、「法整備」は立法する官僚と政治家の自己満足にすぎず、実効性はないと言っているのと同じではないか。

コロナ以外の病気やケガのために病床を確保しなければならないという大義名分はあるだろう。ただし、それは民間病院も同じことである。なぜ、未曾有の事態においても国は両機構に対して手をこまぬいているのか。そこには、「消えた年金問題」で政権交代の震源となり、売却寸前だったのに公的病院として残った「ゾンビ」のような大病院があった。

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